「えっ…この香車は何?」藤井聡太22歳が“AIに指せない勝負手”で評価値13%→99%「催眠術のよう」A級棋士・中村太地が解説で混乱した理由
催眠術に操られた感覚の正体とは
何度かお話ししたことがあるかと思いますが――将棋では、本局のような感覚に陥りやすい局面が往々にして発生するのです。 盤上という2人だけの空間で、長時間ともに同じ時間を共にすると〈この将棋はこう展開していくよね〉と阿吽の呼吸のようなものが生まれる。 対局場ではありませんが、解説者の我々も丸1日にわたって対局を見つめていると、意外性のある一手が飛び出すと心が惑わされてしまう。思考のギャップを感じつつ、何としてでも最善手を選ばねば……という心境が、最終盤の勝負どころで来る。その感覚は非常に難しいものです。 大逆転の一手には私も混乱しましたが(苦笑)、対局全体を振り返ってさらに衝撃だったのは、114手目の「△8三同玉」でした。 先ほども触れましたが、玉がまったく無防備に見えて、なおかつ藤井王座は1分将棋に入っています。紙一重の受けを導き出せなければ即敗着、というすごく危険な道を渡る決断をしたんですね。〈苦しいけど少し安全に行こう……〉といった恐れのような感情が全くなかった。 つまり1分将棋であろうと、自分を信じる勇気が逆転劇を導き出した。 すべてが逆転に繋がる布石、語弊を恐れず言えば「藤井王座が勝利する結末に吸い込まれている」ような感覚を、解説しながら覚えました。それが先ほど「催眠術」と表現したものの正体なのかもしれません。
佐々木勇気との竜王戦第6局でも驚きの展開が
藤井七冠の対局では、「AIに指せないだろう勝負手」が出てくることがあります。そういう意味では竜王戦4連覇を決めた12月の第6局も同様でした。対局1日目の序盤を見ていて、正直なところ、挑戦者の佐々木勇気八段が優位に運んでいるという感想でした。 ではなぜ、その形勢がひっくり返ってしまったのでしょうか? 〈つづく〉
(「進取の将棋」中村太地 = 文)
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