坪井翔が“夫の威厳”保つSF優勝。妻は併催KYOJO CUPで2連勝……プレッシャーもなんのその、オーバーテイクショーで有言実行
第1回瑶子女王杯スーパーフォーミュラ第4戦富士では、VANTELIN TEAM TOM’Sの坪井翔が今季初優勝を飾った。坪井としても4年ぶりの優勝であり、ポイントランキングでも2番手まで浮上した。 【動画】2024年スーパーフォーミュラ第4戦富士:決勝ハイライト 開幕戦はストレートスピードの不調もあり11位と不本意な結果に終わった坪井。今季からスーパーフォーミュラでもトムスの所属(スーパーGTでは2021年からトムス所属)となり、前年王者の宮田莉朋のマシンを引き継いだ坪井としても、「名門トムスの名を汚すわけにはいかない」というプレッシャーがあったという。しかしながら第2戦、第3戦は連続で3位に入るなど、安定して高いパフォーマンスを見せ始めていた。 2週間前に富士で行なわれた公式テストで坪井は、予選パフォーマンスの向上に重点を置いていたという。結果として今回の予選は4番手に終わったが、ポールタイムから0.030秒差という僅差。レースペースには元々自信があったことから、決勝に向けても優勝が狙えると自信をのぞかせていた。 決勝レースはまさに有言実行の走りと言えた。スタートでは2番グリッド岩佐歩夢(TEAM MUGEN)のストールの煽りを食って5番手に落ちたが、野尻智紀(TEAM MUGEN)、牧野任祐(DOCOMO TEAM DANDELION RACING)をコース上で交わして3番手に。前を走る福住仁嶺(Kids com Team KCMG)と大湯都史樹(VERTEX PARTNERS CERUMO・INGING)が共に早めのピットインを選択したことで前が開けた坪井は、そのレースペースを活かしてレース終盤までステイアウトする戦略を採った。 そして29周目にピットインした坪井は、事実上の4番手でコース復帰するとフレッシュタイヤで追い上げ開始。牧野、野尻、大湯を華麗にオーバーテイクし、地力の強さで勝利を掴み取った。 また、今回は女性ドライバーによるレースシリーズのKYOJO CUPが併載されているが、そこでは坪井の妻である斎藤愛未が2連勝を飾っていた。そのため周囲からプレッシャーをかけられていたと言うが、有言実行のレースができたことを喜んだ。 「めちゃくちゃ嬉しいです。久々にこんなに嬉しいですね」と坪井は記者会見で語った。 「開幕戦ノーポイントから始まって、シーズンどうなるのかと思った部分もありました。名門トムスの名を僕が汚すわけにはいかないですし。ただ徐々に尻上がりに手応えを感じてここまで来ていましたし、今回の予選は4番手で、レースペースが良ければチャンスあるという中で勝つことができました」 「彼女(斎藤)は2連勝しちゃったので、色んな人から『分かってるよね!』とプレッシャーかけられていましたが……(苦笑)。夫婦で優勝という有言実行できて素晴らしい日になったと思います」 チェッカー直後は、感極まった様子を見せていた坪井。昨日は妻の斎藤のKYOJO初優勝を目の当たりにして涙を見せたが、その際にはレースで泣いたのは2021年にスーパーGTで初タイトルを獲得した時以来だと明かし、「けっこう泣き虫なんですよ(笑)」とおどけていた。ただ、今回の優勝はGT初タイトルなどに肩を並べるほど大きな意味を持つものだった、ということだろう。 坪井は優勝の価値や重みはスーパーフォーミュラもスーパーGTも変わらないとしつつ、スーパーフォーミュラでは長らく勝てていなかったこと、そしてドライバーひとりでイコールコンディションで戦うレースで実力を示せたという点で、今回の勝利は重みのあるものだったと語った。 坪井は今回の優勝によって、ランキング2番手に。ポイントリーダーである野尻との点差は9.5点だ。彼は次戦の意気込みを聞かれると、今回野尻が3位に入って同じく会見場に姿を見せていることを引き合いに出し、油断はできないと気を引き締めた。 「ここで勝つことができたので、後半戦に向けて良い流れを作れたと思います。ここ3戦、3位、3位、1位と来ているので、この流れは崩しちゃいけないと思います」 「チームと共に、チリツモでステップを踏んでここまで来ていて、それをしっかり結果に結びつけられましたが、ライバル勢も速いですし強いですし、あぐらをかいた瞬間に一瞬でやられるのがスーパーフォーミュラなので、さらに積み重ねていきたいです」 「チャンピオンシップを考えると負けていられないです。常に優勝争いをしないと、野尻さんが……いるので、なんとかくらいついていけるように頑張ります」
戎井健一郎
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