スマホだけじゃない、家電メーカーとして攻勢をかけるシャオミ 新製品に見る、日本市場の“攻め方”
意外に少ない100インチテレビ
スマートフォン以外の製品で驚きを以て受け止められたのが、100インチの4Kスマートテレビ「Xiaomi TV Max 100 2025」である。 ポイントは3つある。1つは、100インチというサイズのテレビは、日本国内には意外に少なく、手薄な部分という事だ。本体サイズは横幅が2m30cm、高さ1m30cmぐらいになるので、日本の家庭にはそうそう置き場所がないサイズということもある。 この100インチというサイズが大画面の象徴なのは、テレビの大画面化による競争が激しかった06年のCESで、パナソニック、サムスン、LGエレクトロニクスが一斉に100インチ越えのプラズマテレビを発表したのが発端である。ただし解像度はフルHDであった。 筆者も当時現場で現物を見ており、貸し出し機もありますよと言われたのだが、サイズも重量も相当あり、室内では角が曲がれないので、搬入はリビングの窓を外してそこから真っすぐ搬入するしかないという事であった。まあ、一般家庭ではあり得ないサイズなわけだ。 現在販売されている100インチ前後のテレビは当然4Kだが、低価格のものではゲオ、オリオン、TCL、ハイセンスといったメーカーが出している。それでも40万円~80万円台である。ハイエンドになればLGエレクトロニクスやTVS REGZAに製品があるが、こちらは100万円~400万円台となる。そこにXiaomiは、30万円以下という価格で参入してきた。すでに定価ベースで最安である。 2つ目のポイントは、この価格でありながら144Hz量子ドット技術のQLEDパネルを採用したことである。現行の100インチテレビでは、TCLやハイセンス、TVS REGZAがQLED製品を出しているが、どれも50万円オーバーである。最先端のトレンドを押さえつつ、Xiaomiは一般黒物家電でも既存メーカーと勝負できるという、大きなインパクトを与えるのが目的だろう。 3つ目のポイントは、これがGoogle TV搭載のチューナーレスであることだ。このサイズで見るものは、もはやテレビ放送ではないだろうという割り切り…、ではない。例えば「テレビ放送波が受信できないものはテレビとは呼ばないんじゃないんじゃないか」という感覚は日本だけのもので、テレビ放送もそのままネット経由で見られるというのが、世界のスタンダードである。 イギリスではすでに地上波の放送は辞めてもいいんじゃないかという議論もあるぐらいで、むしろチューナーレスのほうが世界標準なのだ。 狙いでチューナーレスなのではなく、これが世界のスタンダード。この感覚を、保守的な日本のテレビ市場に堂々と持ち込んだというのが、みどころなのである。チューナーがないので、B-CASやACASの支配も受けない。この100インチテレビをきっかけに中型サイズのXiaomi製テレビが市民権を得てくれば、日本にとっては大きな転換点となり得る。 ちなみにXiaomiは米国市場向けにはテレビは販売しておらず、主力はゲーミングモニターである。中国Huaweiのような輸入規制を受けることを警戒しているのか、家電ビジネスとしてはヨーロッパのほうが大きいようだ。また中国本土においては、100インチモデルとして「Redmi MAX 100 2025」というモデルをリリースしているが、これはRedmiブランドからも分かるように、廉価ラインアップである。日本およびワールドワイドで発売される本モデルとは別物だ。 日本においてテレビは、耐久家電という扱いである。一般的にテレビの寿命はおよそ10年と考えられている。以前筆者はTCLの43インチテレビを買ってみたことがあるが、1年ちょっとしか保たなかった。保証期間もちょうど切れたタイミングであり、有償でも修理しようと思ったら、購入価格より修理費のほうが高額というバカバカしい事実に直面した。エコにうるさい日本において、「買い直した方が安い」は許されない。 Xiaomiの場合、スマートフォン以外の家電の品質はどうなのか、あるいは修理サポートはどうなのか。一般家電で日本に参入してきた今、これからそれが「日本人の目」で厳しく問われる事になる。
ITmedia NEWS