冷えから「腎」を守る!寒い季節を健康的に過ごすための冬の養生法を解説
冬は寒さによって肩こりや頭痛が続いたり、感染症にかかりやすくなったりするなど、体調管理が難しい季節である。「冬を元気に過ごすために、『生命を養う』という意味の漢方医学の養生を知っておくとよいでしょう」と話すのは漢方医学にも詳しい薬剤師の山形ゆかりさん。山形さんに、冬の養生における考え方と生活習慣や食事、漢方薬など具体的な養生法について教えてもらった。 【写真】寒い季節は腎の働きが低下しやすい。冬の不調対策である冬の養生について写真とともに紹介
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漢方医学において冬は「腎」と関連
漢方医学において、冬は春に向けて生命活動を維持するために必要な「精」をしっかりと蓄える季節とされています。「精」は発育や生殖活動などに関わるエネルギーで、人間の成長や老化に深く関与している「腎」に貯蔵されます。 ◆冷えで「腎」の機能が低下 「腎」の機能が低下すると、手足の冷えやだるさ、不眠、頻尿、夜間排尿の増加、むくみなどの不調があらわれやすくなります。「腎」は冷えると働きが弱まるため、冬の不調を防ぎ元気に過ごすには、「腎」を冷えから守り、しっかりと体を休めていたわることが重要です。 ◆冬の不調を引き起こす「寒邪」と「燥邪」 漢方医学では、冬の不調を引き起こすのは「寒邪(かんじゃ)」と「燥邪(そうじゃ)」という2つの邪気が関係していると考えられています。 「寒邪」とは、体が耐えられる限度を超えた寒さが体内に侵入することを指します。漢方医学では、体が冷えて「気(エネルギー)」や「血(栄養)」の巡りが悪くなると、手足の冷えや頭痛、悪寒、発熱、腹痛、下痢などが起こると考えます。「寒邪」は、とくに下半身の不調が起きやすい傾向にあります。 「燥邪」は、体を乾燥させる有害な影響のことです。「燥邪」は主に空気の乾燥が原因で、喉や鼻などの粘膜にダメージを与え、感染症や咳、鼻血、目や皮膚の乾燥を引き起こします。 「腎」が「寒邪」や「燥邪」に侵されると、「腎」の働きが弱まり、冬の不調がより深刻になる可能性があります。
体を休め、温める冬の養生法
養生とは、「生命を養う」という意味を持つ漢方医学の考え方です。季節の変化に合わせて心身を整え、不調の予防や改善だけでなく、よりよい健康状態を目指していく取り組みを指します。 冬の養生では、動物が冬にエネルギーの消費を抑えて栄養を蓄えるように、人間も積極的な活動を控えめにするのが望ましいとされています。 ◆早寝遅起きで体を休める 漢方医学の古典「黄帝内経(こうていだいけい)」では、冬は暗くなったらすぐに休み、朝は日が昇って温かくなってから起きる早寝遅起きがいいといわれています。 これは睡眠時間を確保して体を休めるだけでなく、日が出ていない気温の低い時間帯に活動して体を冷やすのを防ぐ目的もあります。 そのため、冬は普段より早めに就寝し、睡眠時間を長めに確保しましょう。早めの就寝でも寝付きをよくするには、お風呂でしっかりとお湯に浸かる、靴下などで体の熱が逃げないようにするなどの方法で体を温めるのが効果的です。 ◆こまめに体を動かす 冬は、体力を消耗するような激しい運動は避けたほうがいいとされています。ただし、まったく運動をしないと「腎」を支える足腰の衰えにつながり、健康を損なう可能性があります。 冬は汗を大量にかくような運動を休日にまとめてするのではなく、日常生活のなかでこまめに体を動かしましょう。家事をしながら体を動かすながら運動や、ウォーキング、ヨガ、ストレッチなどの汗をかかないか軽くかく程度の運動を継続的にするのが適しています。 なお、汗は蒸発するときに体の熱を奪います。運動をして汗をかいた場合は、体が冷えないようにすぐに拭き取りましょう。 ◆温性の食材を積極的に食べる 漢方医学では、食材を五性(寒性、涼性、平性、温性、熱性)に分類します。冬は、内臓を温めて体の動きを活発にする効果が期待できる、温性の食材を積極的に食べることが推奨されています。 温性の食材とは、寒い季節が旬のものや寒い地域でとれるもの、色の濃いものなどです。冬が旬の長ねぎ、青森や北海道などの寒い地域でとれるにんにく、色の濃い食材であるにらやかぼちゃ、にんじん、肉類などが当てはまります。 ごぼうや大根も冬が旬の食材ですが、実は体を冷やす寒涼性の食材です。ただし、加熱すると平性へ性質が変わり、冷やす作用が和らぐため、煮物や鍋などにして食べるといいでしょう。