じつは、主役が出てこなくても「点数は稼げる」…高校数学をすっ飛ばして、大学入試問題を解いてしまう「数学教育界の強力スピンオフ」
「主役不在」こそ面白い!
さて、ドラマ『THE PENGUIN』がすごいのは、(少なくともすでに公開されたエピソードまでは)本来の主役であるはずのバットマンがまったく出てこないことです。姿を現さないのはもちろん、名前や存在に言及されることもほぼありません。 それにもかかわらず、代表的な映画批評サイト「RottenTomatoes」で94%の高スコアを叩き出すなど、主要なレイティングサイトで軒並み高評価を得ているのです。 いわば“脇役”だけで固めたストーリーでこれだけ視聴者を魅了するというのは並大抵のことではないと思うのですが、じつはペンギンにハマり始めたまさにその頃に編集作業の佳境を迎えていた『中学数学で解く大学入試問題』もまた、「主役不在」の一冊なのです。 大学入試は当然、高校までの学習内容を終えていることを前提に作問されています。数学であれば高校数学で学ぶ範囲までが対象になるのが通常で、それを「中学数学で解く」というのは、まさしく主役(高校数学)不在で映画やドラマを撮るようなものでしょう。 そんなことが可能なのか? 可能だとしてどんな意味があるのでしょうか?
まるで立体パズルを解くように
もちろん、すべての大学入試問題が中学数学だけで解けるわけではありません。しかし、大学入試の良問には、知識の量より質を問うものものが多く、そのような問題に中学数学の知識と技術で挑むことで、数学的思考力をグンと高めることができるというわけです。 試験といえば、その場で初めて目にする問題=「初見の問題」を解くことが必須ですが、中学数学で大学入試問題に挑戦することは、初見の問題を解く力を身につけるための格好の学習法でもあります。 本書では、東大や京大をはじめ、有名大学の過去問からの「よりすぐりの良問」を題材に、中学数学で攻略するための着眼点と解法が懇切丁寧に紹介されています。 また、中学数学によるものだけでなく、高校数学を用いた場合の解法もあわせて説明されていますので、1つの問題に対する多角的なアプローチを知ることができます。数学の「思考過程」を多層的に体験でき、まるで立体パズルを解いているように入試問題を楽しむことができる一冊になっています。 じつは数学が大の苦手だった私は、「こんな学び方をしたかった」と何度も思いながら本書を編みました。「主役不在」という思わぬ共通点で結ばれた『THE PENGUIN』とあわせてご堪能いただけましたら幸いです。(T) 中学数学で解く大学入試問題 数学的思考力が驚くほど身につく画期的学習法 有名大学の問題が「解ける喜び」「考える楽しさ」を体感しよう! 中学数学の知識・技術で大学入試問題にトライして、数学の真髄に触れる。
ブルーバックス編集部(科学シリーズ)