「半導体の教育と研究の地盤が整った」…〝生産集積地〟で実施、九州大学の改革とこれから
半導体のスペシャリストを育てる「価値創造型半導体人材育成センター」に続き、6月には半導体のデジタル化と脱炭素化を同時に進める「半導体・デバイスエコシステム研究教育センター」を設立した九州大学。同大副学長の白谷正治教授は「半導体の教育と研究の地盤がようやく整った」と胸を張る。 【図解】九大が育成する価値創造型半導体人材と活躍を見込む分野 日本の集積回路(IC)生産の40%超を占める「半導体アイランド・九州」では、近年の活発な設備投資でさらに生産増が見込まれる。世界シェアは現在6%だが「面積が同等の台湾のシェア22%相当まで伸びてもおかしくない」と見通す。 実際、世界からの注目度は高い。九大は台湾の工業技術研究院(ITRI)と半導体国際シンポジウムを共同開催し、半導体の研究と人材育成では台湾積体電路製造(TSMC)と包括連携を締結。集積回路設計の日米連携ワークショップも5月に九州で開いた。 九大は極端紫外線(EUV)技術開発にも力を入れており、7月にはEUV光の照射と解析評価を行う新会社を設立した。「EUV技術が日本になければ、トップシェアを持つ日本の素材メーカーが次世代の半導体材料を開発していけない」と考えるからだ。 こうした九大の改革を進めながら、自身はプラズマ技術によるナノ構造の制御研究にも取り組む。集積回路を多層化するには、配線時に深い穴を開けるための硬いカーボン薄膜が必要。白谷教授はカーボンナノ粒子をうまく制御し、硬く応力の小さい剥離のない薄膜の作製に成功した。 九州では半導体人材の不足が取り沙汰されるが、熊本大学や九州工業大学、高専、地元企業などと協力し、今後も日本の“生産集積地”から「世界で活躍できるトップ層の人材」を送り続ける。