配給手数料は従来の半分以下、クリエイターたちに利益還元を…日本映画界に風穴を開ける K2 Pictures の挑戦
長年、劇場側から配給会社を見ていた紀伊は、シネコン全盛となって久しいこの業界で「配給会社は本当に必要なのだろうか?」という思いをぬぐえなかったのだという。「そもそもなぜ“配給会社”という概念が生まれたかというのは明快なんです。今も3,600スクリーンくらいありますが、1960年頃は7,000館ほどの莫大な数の映画館があり、それも今のようなマルチプレックスではないから1館1館にオーナーがいて、そのそれぞれと取引をする必要がありました。配給は映画と映画館があれば本来成立するはずのビジネスにおける“代理業”で、当時は映画館にある現金を回収してくることが一番の仕事でした。フィルムを届け、上映してもらい、お金の半分を回収、それぞれに契約書を書いて……という煩雑で大変な作業だったからこそ、配給という仕事が生まれたんです」
「でも今は興行収入でいうと、マルチプレックスの大手8社、9社くらいでシェアの約9割を持っている。ということは配給の仕事は主に9人と話をして、振り込んでくださいって言えばいいだけなのに、なぜかずっと配給会社って強いじゃないですか? それはおかしいんじゃないだろうかというのは20年くらい前からずっと思っていました。論理的に考えて、配給って本当に要るのかな? プロデューサーがやればいいんじゃないの? と」
ティ・ジョイ時代、日本のコンテンツを海外に展開することを目指す経済産業省の仕事を請け負ってインドネシアに出張を重ねた際に、その考えが理にかなっていることもわかった。「インドネシアにはシネコンチェーンが二つしかなくて、古い映画館がないんですよ。だから配給会社が存在しなかったんです。“アメリカ映画を輸入してきて配給する”という会社はあるけれど、インドネシア映画をインドネシアで配給する会社はないわけです。『ほらな!』と思いました。これは誰がブッキングしているの? と聞くと、二つしかないんだからプロデューサーがやっている、と。もちろんPRを司る人たちはいますけどね」