【記者解説】石破人事の思惑とは?(「借金」返済人事!?)
ここで、「麻生氏には誤算があった」と林氏は説明します。 1回目の投票は「計算通り、会心の出来だった」とみえる麻生氏の、決選投票での誤算とは。 ひとつは岸田派の温度感。麻生氏が、岸田派との三頭政治を復活させ、高市氏を祭り上げようとした戦略が、岸田氏に振られた形になりました。 林氏「これには伏線があって。麻生さんは『岸田は俺と一緒にやってくれる』という思いがありましたが、岸田さんの麻生さんを見る目が冷たくなっていたところを見誤った」 もうひとつは参議院議員の高市氏支持が伸びなかったことです。ここには、高市氏の靖国問題があります。 首相になった場合も靖国神社への参拝を続ける意向を示した高市氏ですが、岸田政権では日韓関係を改善し、そのことをアメリカも歓迎するムードが高まっていました。 林氏「俺が作ってきた日韓関係を壊すのかという思いが、高市離れを起こした」 加えて、外交をしっかりやらなければという思いが自民党内にもあり、決選投票で麻生氏の思惑が外れたのではないかと推測します。 高市陣営の取材によると、靖国神社の話は選挙戦の途中からトーンを落としていたようですが、とくに来年選挙を控える参議院議員の不安を招いたという可能性も指摘されます。
「借金返済の人事」の一方、麻生・高市外しの断絶も
10月1日には、石破内閣の顔ぶれが発表されました(収録日の9月30日時点で内定)。 この中で林氏が最も注目するのが、村上誠一郎総務大臣です。 村上氏は今まで反安倍のスタンスを鮮明に示し続けてきました。同時に、言葉が強いところがあり、物議を醸してきた。安倍チルドレンから見ると許しがたい敵である村上氏を総務大臣に起用するという話で、永田町には「村上ショック」という衝撃が流れたのだそうです。 とはいえ、全体を見ると「石破氏の政権基盤の弱さ、いろんな人に借りを返す人事になっている、借金返済の人事」と林氏は指摘します。 林氏「刷新感を出すなら若手や女性が基軸になるべきところ、予想される顔ぶれ(※編集部注:収録日時点)の裏側には、今回石破氏を押し上げた人たちの影がよく見える形になってしまった」 水内氏は、総裁選で敗れた高市氏系が入らなかったことに着目しながら、 「(麻生派など)旧派閥の意向は飲んだのかな」とコメントします。 とはいえ、一人ひとりを見ていくと、石破氏の強い思いが垣間見えるところもあります。 林氏「外務・防衛に防衛系の2人を置きましたよね。すぐじゃないですけれど、日米地位協定の見直しに向けた第一歩を進めるのはあるのかな」 水内氏「防衛族の中で石破氏に近い2人を据えることで、多少摩擦が起きてもガンガンやっていきたいという体制を敷いたのかな」 水内氏は、平将明氏(デジタル大臣)にも「自民党の中でも逸材と言われていて、デジタル分野に精通しているし、理にかなったことをやる」と期待を寄せます。