米大統領選の行方、数字の魔力に予断禁物、2016年は大外れ 専門家は「推移が重要」【ワシントン報告㉒世論調査】
11月5日の米大統領選が迫り、連日のように各種世論調査が発表されている。情勢が定量的に示されるため説得力を持つが、数字の魔力という面がある。しょせんは調査時点を切り取った断面に過ぎず、予断は禁物だ。富豪トランプ氏が大統領選を制した2016年選挙は世論調査の見通しが大きく外れた。専門家は各種調査結果の推移や変化の在り方が重要だと見る。(共同通信ワシントン支局長 堀越豊裕) 【写真】トランプ氏福島原発事故に「3千年は土地に戻れない」と軽口 福島を訪れたことのあるマスク氏が反論し…「常軌を逸している」
▽どちらが優勢とは報じられず ニューヨーク・タイムズ紙が2024年10月25日に発表した全米世論調査結果では、民主党候補ハリス副大統領と共和党候補トランプ前大統領が同じ48%で並んだ。調査は10月20日~23日、2516人を対象に電話で実施した。世論調査大国の米国において、信頼性が高い調査の一つに挙げられる。 世論調査の数値は面接などを通じて得られた生のデータを独自の計算方法で処理して発表される。当然、誤差が含まれ、今回はプラスマイナス2・2ポイントとはじいた。同じ48%であっても、実際には数ポイントの差があり得ることを意味する。 選挙報道に強いAP通信は「誤差の2倍以上の差がつかないと、優勢とは報じない」を基準にしている。選挙ではメディア各社が当選確実の報道を急ぐが、全米に記者を配置しているAPの判断が最も重視される。 ▽誤差が大きい州単位の調査 今回の大統領選は激戦7州次第で勝敗が決まる。全米より州ごとの数字が重要だが、誤差は州単位の方が大きい。理由の一つは精度の高い電話よりもインターネット調査の割合が多い点にある。
米世論調査協会(AAPOR)によれば、2020年大統領選では世論調査と実際の得票の差が全米レベルで4・5ポイントだったのに対し、州レベルは5・1ポイントだった。 政治分析サイト、クック・ポリティカル・リポートのエイミー・ウォルター氏は「最新の数字にいちいち踊らされるのではなく、傾向を見た方が選挙戦の現在地を捉えられる」と言う。 バイデン大統領の撤退に伴って出馬したハリス氏は、バイデン氏に対し優勢だったトランプ氏との差を一気に縮めたが、大きく引き離すには至らなかった。終盤に入って頭打ちになったように見える。ニューヨーク・タイムズ紙の10月上旬の調査はハリス氏がトランプ氏に3ポイント、リードしていた。 共和党は1998年にブッシュ大統領(父)が勝利して以降、2004年のブッシュ氏(子)以外、総得票数で民主党に負けている。カリフォルニア州やニューヨーク州などの人口の多い州では民主党が圧倒的に強いことによる。総得票数で負けても勝者になれるのは州ごとに割り当てられた選挙人の数で争う米大統領選の特殊性のおかげである。