浦和サポが呆気に取られてブーイングを忘れた伝説の企画「メーカブー誕生祭」。担当者が「間違っていた」と語った意外過ぎる理由
「大前提として、浦和サポーターに対してリスペクトを持っている」
ここで冒頭の田代さんの言葉に戻りたい。メーカブー誕生祭は、「想定が外れた」ものであり、「プランが間違っていた」と。いったいどういう意味なのだろうか――。 「大前提として伝えたいのは、僕は浦和サポーターに対してすごくリスペクトを持っているということです。例えば、彼らがアウェーに乗り込んだとき、ホームチームのイベントやセレモニーに対してよくブーイングしていますよね。こうした浦和サポーターのブーイングに対して批判的な意見も耳にします。でも彼らの行動原理は、チームを勝たせたいという純粋な応援の気持ちからなんだと理解しています。ホームチームは演出等によって自チームが戦いやすい雰囲気をつくり出す。だからアウェー側の自分たちはそれには乗っからない。ブーイングでホームの雰囲気をつくることを全力で妨害する。それが自チームを勝たせることにつながる、と。そういうホームチームとアウェーチームのせめぎ合いがあっていいなと」 だが現実には、メーカブー誕生祭で浦和サポーターからいつものようなブーイングが起こらなかった。 「これまでの経緯も知っているフロンターレサポーターは温かに見守り、浦和サポーターからは盛大なブーイング。対比するふたつのハーモニーがスタジアム全体に生命の息吹を感じさせるような、そういう絵を思い描いていました。僕らは演劇や映画を作っているわけではないので、サポーターがその場でリアクションすることで事象が完成すると思っています。面白くなるのもすべるのも現場の空気次第。そういった意味では、完全に想定が外れました。何かが欠けていたのか、そもそもプランが間違っていたということなのかなと」 確かに田代さんの想定した通りにはならなかった。だが、多くの人が面白がり、また一番の目的も果たせた。 「あれはあれで面白かったですからね。それがフックになったと思いますし、誕生祭は意味が分からなかったけどメーカブーは好きとか、フロンターレと陸前高田のつながりを知れてよかったとか、浦和サポーターを含めていろんな人がSNSでつぶやいているのを見たのが、何よりうれしかったですね」