タッチパネルを導入しないキッチンABC 3代目が大切にする“昭和感”
「片手間ではなく」冷凍事業に本腰 働き方改革にも
コロナ禍では、着手した飲食店が少なくない、冷凍事業にも取り組みます。しかし東京フードサービスの場合はコロナ禍対策という意識ではなく、あくまで新たなチャレンジの一環だと稲田さんは強調します。 「だからこそ片手間ではなく本腰を入れて。この先、継続できる事業として投資も含め取り組みました」 実際、先の取り組みとは投資額も桁違いでした。キッチンABCの味を冷凍商品として専用の自販機やオンラインで販売するビジネスモデルですが、専用のキッチンを立ち上げると共に、同じく専用の冷凍機や配送用の車両も手配、問い合わせ窓口も設けます。 「味が落ちるのでは」、と心配の声も上がりましたが、急速冷凍など冷凍技術が進んでいたため問題ありませんでした。逆に、カレーなど時間の経過と共にスパイシーさが薄れていくメニューは、冷凍にした方が美味しい場合もある、との気づきを得ます。 一方で、自販機販売のためサイズが限られている。ご飯の盛り方などを調整しないと、正しく解凍できない。いくつかの課題を克服していくことで、商品化を実現します。 冷凍事業に本腰を入れて取り組んだのは、他の理由もありました。たとえば、働き方。飲食業はどうしても待機時間が発生したり、労働時間が長かったりする傾向にあります。 冷凍事業であれば工場的なものづくりですから、決められた時間内に決められた数を作ればよく「働き方の多様性にもつながると考えました」と、稲田さんは言います。また、核家族化や高齢者の増加などから、社会的に宅配が求められていること、フードロス問題の解決に寄与するとも考えました。 ライバルもいますが、ここでもキッチンABCの魅力が差別化になる、と稲田さんは言います。一つひとつの料理を、町の洋食屋のプロ調理人が手作りしている点です。当初はOEMなども考えたそうですが、各店舗のシェフが交代で調理する体制としました。