なんと「人類史上2番目」に読まれてきた…多くの人が知っている「史上最高の数学バイブル」が示す、じつにシンプルな数学の「神髄」
数学の〈神髄〉とは
このように、『原論』以降の数学は、スタート地点を(公理と)定義という形ではっきりとさせ、そこから次々に定理を証明することが〈神髄〉になりました。神髄の「解像度を上げる」ことが、『中学数学で解く大学入試問題』の大きな目的の1つです。 現時点では、数学を学ぶときには「より基礎的な事柄から積み上げる」ことが大切だと理解してください(ただし、中学数学を超えているとはいえ、高校数学レベルでは一から十まで定義からスタート、とはいきません。たとえば、高校の微分積分は、厳密な証明抜きで「無限」を扱っています)。 それでは、「より基礎的な事柄から積み上げる」手始めとして、次の問題を考えてみましょう。 問題 1 +(-1)=0 をスタート地点として、 (-1)・(-1)=1 であることを説明せよ。 ヒント :「・」(積の記号) 「・」は積の記号です。すなわち、この(-1)・(-1)は(-1)×(-1)と同じです。
「基礎から積み上げる」ことの大切さ
1+(-1)=0の両辺に-1 をかけると、 1・(-1)+(-1)・(-1)=0・(-1)……A 1・〇=〇なので、 1・(-1)=-1 です。 式Aの右辺において、0・△=0なので、 0・(-1)…=0 です。よって、Aは、 (-1)+(-1)・(-1)=0 この両辺に1を加えると、 1+(-1)+(-1)・(-1)=1+0……B 式Bの第1項と第2項において、□+(-□)=0 なので、 1+(-1)=0 です。式Bの右辺において、◇+0=◇ なので、 1+0=1 です。よって、式Bは、 0+(-1)・(-1)=1 この左辺において、0+◇=◇ だったので、この式から、 (-1)・(-1)=1
「あたりまえ」だと思っても
スタート地点とした「1+(-1)=0」は、符号だけが異なる2数の和は0(の特別な場合)であることを示しています。 それに、 1・〇=〇……1にある数をかけても変化しない0・△= 0……0にある数をかけると0□ +(-□)=0……符号だけが異なる2数の和は0(1+(-1)=0 もこの一例です)◇ +0=◇ ……ある数◇に0を加えても変化しない といった、負の数どうしのかけ算よりもさらに「基礎的な事柄から積み上げる」ことにより、(-1)・(-1)=1を導くことができました。 基礎的な事柄から積み上げる (-1)・(-1)=1 ↑ 1・〇=〇 0・△=0 □+(-□)=0 ◇+0=◇ このように、数学においては「基礎から積み上げる」ことが大切です。 さらに、この問題の場合に限らず、何かを学ぶときには、結果をただ記憶するだけではいけません。 知識が「点」でとどまることなく、「線」、さらには「面」へと広がっていくことを意識してください。 続いては、知識が「線」となった状態とはどのようなものかを確認するための問いに挑戦してみましょう。 問題 「正三角形は、二等辺三角形ですか?」 中学数学で解く大学入試問題 数学的思考力が驚くほど身につく画期的学習法 有名大学の問題が「解ける喜び」「考える楽しさ」を体感しよう! 中学数学の知識・技術で大学入試問題にトライして、数学の真髄に触れる。
杉山 博宣(岐阜県立高等学校教諭)