連絡も返信も一切なし…そんな”自己チュー”ASD夫に、いちいちイライラせずに済む「伝え方の工夫」
基本は「言語化」「可視化」して伝えること
「言葉にする」「見てわかるようにする」この2つは、もういろいろなところで常識のように紹介されていることですけれども、大人に接するときも、子どもに接するときも、とても大事なことです、 先ほども書いた通り、「あの人」は顔色をうかがうとか、様子から察するといったことが苦手です。だから“言わなくてもわかる”ようなことでも、言葉にして伝えたほうがいいのです。こちらが〈こんなことまで言わなきゃいけないの!?〉と思うようなことを、実は「あの人」は毎回新鮮な気持ちで聞いているかもしれません。 だから、煩わしいからと怒ったように伝えるのではなくて、こちらも新鮮な気持ちで、日常のちょっとした用事をお願いするときのように、あくまでも淡々と伝えると良いと思います。 なお、「耳からだけの情報は消えやすい」という点によく気をつけて伝えるようにしたほうがいいと思います。この節の冒頭のイラストのように、「洗剤買ってきて」と頼まれても、耳を通り過ぎるかのように抜けてしまって、いざ店に言ったら、自分が欲しいビールのことばかりになる、なんていうことも「あの人」には起こり得ます。だから口頭だけでなく、文章で伝えることも、合わせておすすめします。
まずは「文章」で。それがダメでも手はある!
便利なのはLINEです。紙のメモも“あり”ですが、メモを無くしたり、見るのを忘れたり、という可能性もあります。その点、LINEはスマホに入れられるし、メッセージが届いたら音が鳴るし、文章だから「あの人」自身のペースで好きなだけ確認できるし……と、メリットいっぱいです。 さらにLINEは既読がつくから、こちらにとっても有難いです。アキラさんと一緒に暮らしていた当時は、まだメールしかありませんでした。私がメールでメッセージを送ると、アキラさんはそれを見るけど、“自分が見たからOK”と判断する人なので、「見ました」という返事はくれません。 だから、こちらは読んだか否かわからなくてモヤモヤするし、どうしても大事な用だと電話で念押ししなきゃいけないし、何かと大変だったのですが、LINEだと最低でもメッセージを見たかどうかはわかるので、そんな気苦労はありません。 なかには文章が苦手な「あの人」だっているでしょうが、であれば「画像」を使ったっていい。とくに複雑な情報は画像で示すとわかってもらいやすいみたいです。私は家計簿をつけているんですが、アキラさんに収支を示そうと書いたものをみせても、わかってもらえませんでした。本人にとってはよくわからない数字の羅列にしか見えなかったのかもしれません。 そこで別の機会に円グラフにして、「今月は支払いがこのくらいで、そのうち4分の1くらいがこれで……」と説明したら、数字だけを見せたときは私が文句を言いたいのだと誤解していたみたいだったのですが、そうではなく、事実を伝えようとしていることを理解してもらえました。 後編記事〈発達障害がある人に「誤解なく」伝えるための言い方・接し方…手順を分けて、具体化する。〉へ続く。 *この記事は2024年9月29日に東京メンタルヘルススクエア主催で行われた講演をもとに構成しました。
野波 ツナ(漫画家)