「言動が派手で人情味に厚い社長」がいる会社は潰れる…今すぐ逃げ出すべき「倒産寸前企業」チェックリスト
CASE1 取引銀行を41行水増し! 世紀の大粉飾で露わになった社長の倫理観 ■社長は銀座で豪遊20年以上も粉飾決算 堀正工業は、老舗ベアリング専門商社の一次代理店として、事業を拡大していました。ところが、20年以上も粉飾決算を続けていたことが発覚し、23年7月に東京地裁に破産を申請しました。同社の決算書には、取引金融機関が5行しか掲載されていませんでしたが、実際には46行と取引があり、それぞれから借り入れをしていました。なぜそんなことが可能だったのでしょうか。それは、取引金融機関ごとに46種類もの決算書を作っていたからです。同社は政府系金融機関とメガバンク2行とも取引がありました。その3行は変えずに、残りの2行にいろいろな地銀を並べ替えて、金融機関ごとに決算書を作成したのです。 振り返ってみると同社は、00年ごろから粉飾決算をしていたのですが、当時は業績が悪化して金融機関から追加融資を受けられない状態になっていました。そこで、赤字を黒字に見せる決算書を作ったところ、融資を受けることに成功してしまったのです。一度嘘をつくと、後戻りはできません。そのまま20年以上も嘘をつきとおすことになりました。 このケースで経営者に欠けていたのは倫理観です。後日談ではありますが、融資を受けたお金と個人のお金の区別がつかなくなり、社長が銀座で豪遊したり、別荘を買ったりしていたようです。売り上げ規模のわりに経営者の羽振りが良すぎる企業は、要注意ともいえます。 ■転職サイトの口コミに破綻の兆候が見える また、00年ごろから増収増益が続いていたことも疑うべき点でした。08年にはリーマン・ショックがあり、自動車メーカー、機械メーカーを含めて世界的に業績不振に陥りました。ベアリングを利用する業界全体が沈んでいたときに、同社だけ増収増益であるのは不自然です。金融機関も「何となくおかしい」と気づいていたかもしれませんが、前述のように政府系金融機関とメガバンク2行が景気の悪い中でも融資をしていましたから、その他の地方銀行は「大丈夫だろう」と判断したのでしょう。景気が悪いときは、銀行も融資先に困ります。その中で増収増益の同社は、積極的に取引したい企業だったはずです。 企業の業績の善し悪しを判断する際に、転職サイトで従業員のコメントをチェックすることもあります。同社の評判を見ると、さほど儲かっている企業ではないことが従業員のコメントからもはっきりわかりました。また、同社のサイトでは「提案型の営業」をしていることがアピールされていました。しかし転職サイトを見ると、「大手メーカーから仕入れた物を右から左に流すだけの商売です」とのコメントが見られました。サイトに書かれていることと、実態がまったく違っていたのです。それで増収増益を続けられるでしょうか。こうしたところにも企業の実情を知るヒントがあるのです。