「言動が派手で人情味に厚い社長」がいる会社は潰れる…今すぐ逃げ出すべき「倒産寸前企業」チェックリスト
CASE2 お客から集めた「前受け金」を使い果たし……有名脱毛サロンの無計画すぎる経営 ■前受け金ビジネスは計画性が要になる エム・シーネットワークスジャパンは、女性専用の美容脱毛サロン「銀座カラー」を運営していましたが、23年12月に破産手続き開始決定を受けました。同社の破産は、債権者が10万人にものぼる異例の事態となり、その意味でも注目を集めました。 同社のビジネスモデルは、利用者が料金を前払いすることでサービスを受けられる、いわゆる“前受け金ビジネス”でした。前受け金ビジネスは、英会話学校やフィットネスクラブ、エステなどでよく見られます。利用者から先に料金を受け取るので、金融機関から運転資金や設備資金などを借りる必要がありません。それが大きなメリットです。ただ資金繰りに計画性がないと行き詰まり、破綻してしまう可能性があります。 前受け金ビジネスでは、利用者から集めた資金を使って広告宣伝をして集客します。人気のタレントを起用すれば、会社の知名度が上がりますし、有名人がCMに出演していれば安心感も高まります。実際に「銀座カラー」も、有名タレントを起用したCMを放映し、顧客を増やしていきました。利用者が増えれば前受け金が入り、その資金を利用して、さらに広告宣伝をすることで、ビジネスが拡大します。ただそれが行きすぎると、自転車操業になってしまいます。新規の利用者が増えている間は資金が回っていきますが、利用者の増加が止まってしまうと、一気に資金繰りが悪化します。 「銀座カラー」のケースでは、コロナ禍で人の移動が難しくなり、サービスの提供が一時できなくなりました。新規の利用者も急減して、すでに集めたお金を使い果たし、倒産したのです。 どんなビジネスでも基本的には「支払い不能=倒産」です。仕入代金などの支払いができなくなった時点で、倒産するのです。しかし、前受け金ビジネスは、お金が入るのが先で出るのが後ですから、お金をうまく管理していれば倒産しません。その意味ですぐれたビジネスモデルなのです。 そこで大事になるのがキャッシュフローの把握です。先述のとおり、前受け金ビジネスでは、お金が入るのが先で出るのが後です。そのため資金繰りはシンプルですが、入るお金よりも出るお金を抑えて、キャッシュフローがマイナスにならないように管理しなければなりません。ただ実際にはキャッシュフローが苦しくなることも多く、何とかして新規の利用者を集めて前払い金を得ようとします。強引な勧誘をしている場合には、手元の資金が足りなくなってきている可能性が高いでしょう。「あそこは勧誘が強引だ」といった噂が出ている企業は要注意です。また、高い割引率を提示して契約を迫ってくるような場合も、倒産の兆候かもしれません。あるいは転職サイトで「従業員の給料が遅配している」などのコメントがある場合も同じです。経営者がキャッシュフローの管理をしっかりおこなっていれば、こうした危機は起こりません。 ※本稿は、雑誌『プレジデント』(2024年10月18日号)の一部を再編集したものです。 ---------- 藤井 俊(ふじい・さとし) 帝国データバンク情報統括部長 1965年生まれ。商社、通販会社での商品開発を経て、1993年に帝国データバンク入社。高松支店、岡山支店、広島支店での企業信用調査部門を経て、2023年4月から現職。 ----------
帝国データバンク情報統括部長 藤井 俊 構成=向山 勇 図版作成=大橋昭一