「関節リウマチ」の初期症状や治療法は? 治療中でも妊娠・出産は可能?子どもに遺伝はする?【医師解説】
関節リウマチの治療中でも妊娠、出産は可能? 遺伝する?
編集部: 関節リウマチの治療中でも、妊娠や出産は可能ですか? 上野先生: 現在では、妊娠中でも使用できる抗リウマチ薬もあり、関節リウマチの活動性を抑えつつ、無事に出産される患者さんも多くいらっしゃいます。関節リウマチの活動性がしっかり抑えられた状態(寛解状態)であれば、不妊症との関連性は低く、妊孕性(妊娠確率)に影響はないとされています。一方、活動性が高い状態では妊孕性の低下と、妊娠するまでの期間が長くなることが報告されています。妊娠を希望する患者さんは特に、普段の治療で関節リウマチをしっかりと抑えておくことが大切です。 編集部: 子どもに遺伝しないか心配です。 上野先生: 「関節リウマチ患者が家系に1人もいなかった場合、ある人が関節リウマチを発症する確率は0.5%であるのに対し、リウマチ患者の兄弟姉妹がリウマチを発症する割合は5%」というデータの報告があり、兄弟姉妹間ではある程度の遺伝的要因はあると考えられます。しかし一方で、「親から子へリウマチが遺伝する確率は10%以下」という報告もあり、例えば関節リウマチのお母さんが子どもを10人以上出産した場合、そのうちの1人がリウマチを発症するかしないかというくらいの確率となるため、それほど高い数字ではないことがわかります。つまり、母親がリウマチでも、その子どもはリウマチを発症しない確率の方が圧倒的に高いのです。ただし、一般集団と比べるとリウマチを発症する確率は高いため、「発症するリスクはある」と普段から意識し、気になる症状があれば早めに受診することが大事です。そうして実際に早期発見・早期治療をすることで、日常生活に支障が出るのを避けられたという患者さんもたくさんいらっしゃいます。 編集部: 関節リウマチの人が妊娠・出産する際の注意点はありますか? 上野先生: 大切なのは、妊娠前にリウマチの活動性をしっかり抑えておくことです。先述したとおり、関節リウマチの疾患活動性が高い状態では妊娠しにくいと言われており、仮に妊娠したとしてもその後、低出生体重児や妊娠高血圧症などの合併症が多いとされています。 編集部: 妊娠のタイミングはいつが好ましいですか? 上野先生: 関節リウマチ患者さんが妊娠を希望される際は、まずリウマチを寛解状態にしてからの妊娠計画をおすすめします。また、妊娠前の病状によっては、妊娠中のリウマチの病状や妊娠合併症の有無についてリウマチ科医と産婦人科医、外科医、整形外科医などが連携し、様々な立場から情報提供しながら妊娠を継続することが望ましいとされています。関節リウマチの治療薬の中でも使用されることが最も多い「メトトレキサート」は、流産や奇形児のリスクになるので、妊娠を希望する場合は薬剤の変更を考慮します。そのため、月経周期まで勘案した妊娠計画の立案を、患者さんと相談しながらおこなうといった対応が重要です。 編集部: 最後に、読者へのメッセージをお願いします。 上野先生: 現在は以前と比べて、関節リウマチという病気に関する情報も、治療方法の選択肢も増えています。より早期に関節リウマチを発見し、多くの選択肢から自分自身に合った治療を医師と相談して早期に寛解状態にもっていくことが可能になってきました。ご自身やご家族で、関節のこわばりや痛みなどの気になる症状があったり、ご家族の中にリウマチの患者さんがいてご自身にも遺伝するのか不安があったりしたときは、まず医師に相談してみてはいかがでしょうか。