企業のメインバンク、シェアトップは「三菱UFJ銀行」の9.3万社 メイン社数増の最多は「埼玉りそな銀行」
低金利競争から「金利ある世界」に移行 メイン行に「目利き力」問われる局面迫る
日本銀行が今年3月に政策金利の引き上げを表明して以降、金融機関では企業の借り換え局面などで利上げの交渉を進める動きが活発化するなど、長期にわたって続いた低金利・ゼロ金利の経営環境から「金利のある世界」への移行が進んでいる。実際に、帝国データバンクが今年6月に実施した調査では 、2023年度決算を迎えた企業4.3万社のうち半数超が前年度から金利が「上昇」していた。取引金融機関別にみると、金利上昇の影響を受けた企業は「メガバンク」との取引で最も大きく、「地方銀行」が最も小さいなど、取引行によって動向には若干のばらつきも見られた。今後、金利の上昇で利払い負担が増加し、金融機関に支援を求める中小企業が増えてくることが想定されるなか、貸出金利の引き上げ動向が企業における今後のメインバンク選択に影響を与える可能性がある。 金融機関は、コロナ禍をしのぐために借り入れた債務負担が重い中小企業に対して、事業再生を支援する役割が強く求められるようになった。足元では、再生支援を担う部署や新会社の設立などで事業再生ビジネスに本格的に参入する金融機関も相次ぐ。こうした局面では、地域の中小企業に特に密着した=「小回りの利く」融資や、経営問題を解決まで導く支援ノウハウ、企業の事業価値を適切に把握する「目利き力」が欠かせない。 他方で、長期にわたる低金利での貸し出し競争が常態化してきたことや、中小企業金融円滑化法の施行をはじめ、各種の手厚い金融支援を背景に「借り手=企業側」に優位な状況が続いてきたことで、貸し出しの現場における融資規律の緩みや「目利き力」の低下といった問題が指摘されている。売り上げの架空計上など決算書の改ざんが発覚した企業の経営破たん、「粉飾倒産」(負債額1000万円以上、法的整理)は、2024年1-9月で過去最多ペースとなる74件が判明した。取引の信頼関係を損なう、悪質な行為を行った借り手側に厳しく責任が問われるべきはいうまでもないものの、一方で長期にわたり行われてきた不正を貸し手側で見破ることが困難な事例も目立っている。 多くの金融機関に対しては、相次ぐ地銀の再編や拠点の統廃合、人員など組織のスリム化を背景に「地元の中小零細企業にきめ細かな対応ができるのか」という懸念もある。このほか、低コストでの送金や口座維持手数料の無料化など、利便性の高い決済機能を強みに攻勢をかけるネット銀行が店舗型金融機関に代わる新たな受け皿として存在感を高めつつある。融資先企業のニーズに沿った金融・経営支援をどう展開できるのか、メインバンクとして支援する店舗型金融機関の手腕が注目される。