飲酒でできるアルデヒドも老化原因の可能性 名大、「早老症」の研究で判明
お酒を飲むと体内に生じるアルデヒド類が遺伝子を傷つけて老化を引き起こす可能性がある、と名古屋大学の研究グループが発表した。老化についてはこれまでの研究からさまざまな原因が指摘されてきた。今回、急速に老化が進む「早老症」の発症原因を突き止める研究からお酒がもたらす新たな「悪さ」も明らかになったという。
老化は誰もが避けられないが、その速さは人によって異なる。未解明なことは多いものの、具体的な原因物質を示す研究成果が発表されるなど、老化の謎は次第に明らかになりつつある。 研究グループは、名古屋大学環境医学研究所発生遺伝分野の岡泰由、中沢由華の両講師や嶋田繭子技術員、荻朋男教授らがメンバー。 老化の原因の一つとして体をつくる細胞やタンパク質の「酸化」や「糖化」があり、酸化をもたらす活性酸素などが注目されてきた。しかし、研究グループによると、アルコールの代謝でできるアルデヒド類由来の物質が老化の原因になる、と実験結果に基づいて提唱されたことはなかったという。 アルデヒド分解酵素「ALDH2」は有害物質のアルデヒドを無毒化するために重要な働きをし、同グループによると、日本人の約4割はこのALDH2の活性を低下させる「一塩基多型」と呼ばれる遺伝子の特徴を持っている。 研究グループは、お酒を少量飲むだけで気分が悪くなってしまう人は遺伝的にALDH2の活性が弱く、アルデヒドを分解できなくなることに着目。「ADH5」と呼ばれる同類の酵素がALDH2と同時に働かなくなることにより、小児期から老化が進む「AMeD症候群」という遺伝病の早老症を発症することを2020年に明らかにしている。今回、アルデヒド類による遺伝子損傷が老化にも関係すると考え、次世代シーケンス解析技術を駆使し、マウスの実験を続けた。 その結果、AMeD症候群のモデルマウスでは、体内で分解できずに残った代表的なアルデヒド類の「ホルムアルデヒド」が引き起こす遺伝子本体のDNAの傷(DPC)が蓄積。DPCを修復する働きが「過負荷」の状態になっていた。AMeD症候群同様に早老症とされるコケイン症候群についてもDPC修復が「欠損」状態で正常ではなかったという。研究グループはこうしたDPC修復の不具合により、傷を素早く修復できなくなることが早老症の原因とみている。