「登板ゼロ」から「11球団視察」のドラフト大注目右腕に…沼井伶穏(横浜隼人)が語る「ブレイクスルー確信の瞬間」【ドラフト候補インタビュー】
今年のドラフト会議で高校生投手のトレンドとなっているのが“長身”だ。187センチの大型右腕・今朝丸 裕喜投手(報徳学園)、198センチの大型左腕・藤田琉生投手(東海大相模)が世代のトップを走り、200センチ110キロの剛腕・菊地 ハルン投手(千葉学芸)も多数の球団から注目される存在だ。そんな中、日増しに評価が上がっているのが横浜隼人の沼井 伶穏(れおん)投手だ。父がナイジェリア人で、母が日本人。186センチ84キロと恵まれた体格から最速151キロを誇る速球派右腕である。 【動画】沼井伶穏の剛速球!! そんな沼井だが、今朝丸、藤田のように昨秋からドラフト候補として評価されたわけではない。昨秋にいたっては県大会での登板は0だった。しかしそこから急激にレベルアップ。最後の夏の初戦では、11球団のスカウトが集結した。沼井を熱心に指導してきた押部孝哉部長は「高校生は急激にうまくなる時がありますが、それは地道に努力してきた選手にしか訪れない。沼井はその姿勢があったからこそ開花したと思います」と称える。急成長右腕・沼井のドラフトへの思いを聞いた。
キャッチボール中に確信「掴んだな」
――沼井投手は強豪・中本牧シニア出身。当時はどんな投手でしたか? 沼井 自分の中学2年生まではずっと外野手で、Aチームで出られる選手ではなかったんです。中学3年生から投手をやっていたのですが、当時の自分はマックスも130キロちょっとで、コントロールが悪かったんです。 ――なぜ横浜隼人を選んだのですか? 沼井 プロ野球選手になりたいと思っていたのですが、お誘いいただいた学校の中にプロ野球選手を何人も送り出している横浜隼人がありました。監督の水谷先生から熱心に誘っていただいたのと、1学年上にシニアの先輩であるエースの石橋さん(飛和・立正大)がいたことも大きかったですね。 ――横浜隼人では2年生の春からベンチ入りして公式戦でも登板しますが、当時は左腕のグラブを高々と突き上げる投球フォームが印象的でした。 沼井 最初は左腕を上げない普通のフォームでした。でも、ストライクが全然入らなくて、腕が縮こまっていましたので、左腕を大きく上げる投球フォームに変えました。体を大きく使って、右腕もしっかりと上げることを意識しています。 ――キャッチボール、ネットスローなどでフォームを固めたのでしょうか? 沼井 自分の場合はシャドーピッチングを多くやって、形をしっかりと覚えることを大事にしていました。横浜隼人の投手陣はタオルを使わないでシャドーピッチングをやるのですが、リリースで風を切る感覚といいますか、しっかりと切れているので良い音がなるので、それを大事にしていました。 ――少しずつフォームの感覚を掴んで球速アップしましたが、2年生のときの投球内容はどうでしたか。 沼井 コントロールがアバウトでしたので、公式戦ではあまり投げられず、自分たちの代になった秋でも地区予選で1イニングを投げたのみで、県大会での出番はありませんでした。 ――秋は登板0に終わり、冬ではどんな目標を立てて臨みましたか。 沼井 自分の中で球速を上げること、一番はコントロールを良くして、先発として試合に作れる投手になりたいと思って取り組んできて、それが成果として出たと思います。 ――冬、感覚を掴んだ瞬間があったのでしょうか。 沼井 年明けの1月でしたね。いつも通り30メートルのキャッチボールで、低く強いボールを投げることを意識していました。その時、いつも以上に指にしっくり来る感じがあったんです。「掴んだな」と確信しました。これは絶対にモノにしないといけないと思って、良い感覚を忘れないようにキャッチボールをしていきました。 すっと相手の胸元にボールが伸びるようになったんです。それからはキャッチボールでも失速しないストレートを投げられるようになりました。投球練習でも最初は抜けていたんですが、傾斜のあるマウンドに体の使い方も慣れてきて、低い球筋になって、自分でも手応えのあるボールを投げられるようになりました。 ――球速アップにウエイトトレーニングをやる投手もいますが、沼井投手はどうですか。 沼井 自分はやっていないですね。短ダッシュ、ジャンプ系のトレーニングを主にやってきて、ウエイトよりも瞬発力を鍛えるトレーニングが中心です。この3年間、ウエイトでガシッと筋肉をつけるというよりも、まだ身長が伸びているところがありますので、体の使い方を極めたり、柔軟性を高めることに重点的に取り組んできました。身長の伸びが止まったタイミングでウエイトをやっても遅くはないと思っています。 ――春になって3月の練習試合ではどうでしたか。 沼井 いきなり球速が上がりました。3月最初の岩倉高校との練習試合で148キロが出て、その次は大宮東との練習試合で149キロが出て、だんだんスピードアップしていきました。今までただ力んで投げていたんですが、投げ方を掴んだことで、力を入れなくても球速が出るようになりました。そこからコントロールも改善されて、抑えられるようになりました。