サモア戦 勝利の鍵はセットプレー(スクラムとラインアウト)攻防
4年に1度あるラグビーワールドカップ(RWC)のイングランド大会は、予選プールの佳境に突入した。9月19日にブライトンで南アフリカ代表との初戦を制したジャパンは、ここまでプールBで1勝1敗。勝ち点を4とし、暫定で5チーム中3位につけている。 決勝トーナメント進出にあたる「ベスト8」へは、勝ち点で2位以内に入るのが必須条件だ。計算上、10月3日にミルトンキーンズである第3戦は負けられない80分だ。相手は環太平洋の雄、サモア代表である。過去の対戦成績は3勝11敗。直近の対戦で言えば、昨年、33対14で勝利しているが、サモアのメンバーは大きく異なる。 チームは大会前から、サモア代表戦の大まかなプランを共有している。それは「セットプレーの回数を増やし、圧倒する」である。 セットプレーとは、タッチライン上から投入された球を空中で競り合うラインアウト、フォワードが8対8で組み合うスクラムなどといった攻防の起点のことだ。一見、身体の大きさと筋力だけで優劣が決まりそうにも映るが、実相は違う。 スクラムでは、小兵集団とて選手間の密着度と押し込む方向性の統一に活路を見出せる。ラインアウトでも、事前の分析次第で長身選手の隙間を縫って球を確保できる。ジャパンは海外出身の選手やコーチの力を採り入れながら、自分たちなりのセットプレーの制圧方法を作ってきた。敵国との相関関係から「セットプレーの回数を減らす」という目論見だった大会序盤戦でも、自軍ボール獲得率は9割超だった。 特に、世界トップクラスの南アフリカ代表とのスクラム合戦では、食い込まれながらも持ちこたえて手ごたえを掴んだか。10-45で落としたスコットランド代表戦(9月23日・グロスター)でも、最初こそ「故意に崩れた」と反則を取られたが途中からは互角に持ち込んだ。当日の相手の組み込み方を受け、選手同士で修正を施せたのだ。 テストマッチ(国際間の真剣勝負)の11連勝を記録した一昨年から昨年の間も、欧州6強のイタリア代表などの巨躯揃いをスクラムで圧倒。指導者として今回が3度目のRWCとなるエディー・ジョーンズヘッドコーチも「客観的に観て、ジャパンのスクラムは強い」と言い切ったことがある。そんなプレーの回数をサモア代表戦で増やすと考えるのは、そもそも自然な流れだった。 大一番に向け、マイナーチェンジも施す。お互いが組み込む「エンゲージ」という合図の際のロック(2列目から前方へ力を伝える)の膝の高さを、場面によって変えるのだ。 攻撃時は膝を地面につけた状態からスタートし、低い姿勢で確実なボール確保に努める。守備時は相手に素早くプレッシャーをかけるべく、やや膝を宙に浮かせた体勢で構える…。元フランス代表フッカーのマルク・ダルマゾコーチが選手と相談し、そう決断したようだ。フォワードの平均体重はサモア代表の「111.6」に対し、日本代表は「110.1」。1キロのディスアドバンテージを、創意工夫で覆したい。ちなみにダルマソコーチの見立てでは、サモア代表のスクラムは「とてもパワフル。ただ、(ぶつかり合う瞬間の)スピードがあるわけではありません」とのことだ。