サモア戦 勝利の鍵はセットプレー(スクラムとラインアウト)攻防
ラインアウトでは2メートル級の相手を向こうに、「ウィークポイントはどこかを見て、冷静なコール(捕球位置の指示)ができている」とロックの伊藤鐘史は言う。 元イングランド代表主将のスティーブ・ボースヴィックフォワードコーチを筆頭に、過去のゲームから相手の守備陣形を分析。長身の選手がカバーしなさそうなエリアを把握したうえで、当日、状況を見定めて「コール」を出す。身長190センチ台と、母国のロックとしてはさほど大きくなかったボースヴィックコーチが、持ち前の研究熱心ぶりをジャパンの強化に活かす。 今大会のサモア代表はラインアウトの攻防で苦しんでいるだけに、ロックの大野均は「自軍ボールはしっかり確保して、相手ボールはしっかり邪魔したい」。もちろん、油断は禁物。伊藤はこう言葉を足している。 「サモア代表はその時によって『あれ?』と思う行動を取ることがある。ラインアウトの並び方も、時間帯やメンバーの個人の判断によって違ってくる。法則が見つけにくい。(その場で)見ないと…」 なおラインアウトと言えば、その直後に組まれるモール(ボール保持者を軸に複数人が固まるプレー)もジャパンの強み。過去2戦でも得点を導いている。 フッカーの湯原祐希によれば「試合ごとに、スティーブが持っているプランのうちのいくつかを選んでやっている」。スクラムと同様に低くまとまるのはもちろん、相手の防御方法の盲点を突くよう名伯楽がプランを練る。 スコットランド代表戦のジャパンの1本目のトライは、その成果の現れだ。ラインアウトで捕球した選手が着地するや、他の選手がボールをさらう。真横に空いた一本道の前でモールを形成し、一気に押し込んだ。フッカーの堀江翔太副将は「相手がいないところをしっかり突けた」と満足げに振り返った。 サモア代表戦直前も、ボースヴィックコーチはモールの密着度合いをチェックしていた。「相手役」の選手に塊の横から妨害させながら、である。 横からのモール防御は、本来ならばオフサイドの反則にあたる。しかし当日は、レフリーに見落とされる可能性だってある。もしそうなっても、ジャパンはジャパンのまとまりを失うな…。ボースヴィックコーチはそう伝えたかったようだ。 スクラム、ラインアウト、モールで前に出る。苦し紛れになった相手から反則を誘う。ここから再三のセットプレーの選択、ペナルティーゴールでの3点奪取、運動量を活かした我慢強いボールキープなどで相手をじわりと追いつめる…。これが理想の展開の1つだ。