サモア戦 勝利の鍵はセットプレー(スクラムとラインアウト)攻防
一方、警戒すべきは、サモア代表の問答無用のフィジカルの強さか。 攻撃時は、トップスピードに乗った相手の強烈なタックルは避けられまい。堀江副将は「ビッグタックルがあると頭に入れといて、それを受けてもあまりテンパらないようにしたい」と警戒心をあらわにし、スタンドオフかセンターとして試合を組み立てる立川理道もこう続けている。 「個人で動くとヒットを食らいやすい。(相手に的を絞らせないよう、チーム全体で)いいモーションでアタックしたい」 裏を返せば、チーム全体で「いいモーション」を遂行すれば、飛び出すタックラーとその隣で待つ相手選手の間の凸凹を突きやすくもなる。ランやパスでも魅せる堀江副将は「向こう(の集中力)が切れた後、僕らが一貫性を持ってプレーする。走り勝ちたい。(一般性を保つには)我慢が大事になる」と自らに言い聞かせる。 「一貫性」を保ちたいプレーには、密集戦での働きも挙げられよう。攻撃時のスムーズなボール継続を目指し、立川はこんな意識を徹底したいという。 「相手には何人か、そこ(密集戦)で絡んで球出しを遅らせにくる選手がいる。2人目(攻撃時のランナーへのサポート)の質をしっかりしたいです。まぁ、どのチームが相手でも一緒ですけど」 守備時は、相手の強力なランナーが警戒される。ジャパンとしては、彼らが好きに走る間合いを与えたくない。 巨漢ウイングであるアレサナ・ツイランギ副将、俊敏なフルバックのティム・ナナイ・ウィリアムズ、しなやかなスタンドオフのトゥシ・ピシ。かようなサモア代表のキーマンを、ジャパンはしっかりと止められるか。南アフリカ代表戦時のようなロータックルの雨を降らせられるか。それも、次戦の見どころだ。 サモアと同じ環太平洋のトンガから来たジャパンのナンバーエイト、アマナキ・レレイ・マフィ(スコットランド代表戦で故障退場も、驚異的な回復力で復帰見込み)もこうだ。 「僕も彼らと同じだし、やりたいことはわかる。絶対に、フィジカルに来る。俺らのやることは…前に出てチョップタックル(足元に低く突き刺さる防御)。絶対、できると思います」 ジャパンのバックス陣は、1対1の折に相手をタッチライン際へ押し込む動きを何度もシミュレーションしている。ただ、そもそも球を持たせない工夫も必要か。その意味では、舵取り役の立川が陣地獲得用のキックについてこう話す。 「いままでは相手にボールをあげても…という蹴り方をしていましたけど、サモア代表にはいい形でボールを渡したくない怖いランナーがいる。思い切ってタッチラインを狙ってもいいかと」 味方フォワードのラインアウトでの強みも鑑み、タッチラインの外へ蹴り出してプレーの流れを止めるのも策のひとつ、というわけだ。 得意なセットプレーを起点に、堀江副将いわく「我慢」しながら攻撃権を保って走り勝つ。そんなジャパンのシナリオも、試合序盤の相手のクラッシュでご破算となっては元も子もない…。実際、サモアは、大会初戦でアメリカを25-16で蹴散らした。周囲で期待と不安が交錯するなか、キックオフの時が近づいている。 (文責・向風見也/ラグビーライター)