日本の管理職は「多忙すぎる雑用係」 昇進するほど市場価値が低下するジレンマ
罰ゲーム化の修正法② キャリア・アプローチ
もう一つは、キャリア・アプローチです。日本では幹部層候補を探していく際に、正社員全体を同様に扱い育てていくことが主流です。まるで水田で稲を均等に育てることに似ています。日本のキャリアは主に32歳から35歳で主任級、38歳前後で課長級、45歳以降に部長級という年齢別のキャリアコースが用意されています。いわば「年輪型」の秩序になっています。 一方で、欧米企業の多くでは、選抜された社員以外を幹部候補として見ることはなく、育っていく過程で少数の優れた実、いわば「高級メロン」を育てるような選抜スタイルだといいます。 著者は日本でもそのような次世代リーダー候補の絞り込みを早期に行い、少数向けの特別な育成やトレーニングを実施することを薦めています。また、それ以外の管理職は、広いジョブ・ローテーションをやめ、一定の専門領域を深めるトレーニングに注力すべきだとも言われています。 平等な出世機会・研修・報酬が日本企業で伝統的に重視されている中で、本格的に新たな方針に移すと様々なハレーションの発生が想像されます。それでも過度な平等主義をやめることで、むしろ多くの社員に対して、明確な専門性を持たせて転職市場でもつぶしが効くキャリアを与えられるでしょう。
管理職は罰ゲームなのか
管理職は本当に罰ゲームなのでしょうか。著者は、管理職になることは、自らの仕事人生を「贈与する者」として位置づけなおすことだと言われています。まさに、管理職になったからこそ到達できる境地なように感じます。 難易度の高い管理職という仕事に対して、誰しも初めはとまどうことと思います。その後社会人として輝かしいキャリアを築いた人でも、マネジャーに初めてなった年は気負いすぎて空回りしていた人は多くいます。 ただ、もし管理職への道が打診されたのだとしたら、誰かが適性を感じているはずですし、一度前向きにとらえてみてはいかがでしょうか。当初は罰ゲームだと思えたことでも、しばらくするとコツをつかんで今まで以上のやりがいを感じるときも訪れるでしょう。 そのような苦労とやりがいが混在する管理職という仕事は、誰もが幸せになると確約されたものではありません。そのため、なるかどうかに関わらず、管理職についてのより深い理解が将来を見通すためにとても重要です。本書のタイトル『罰ゲーム化する管理職』という言葉にはっとした方は、ぜひ一度目を通し、管理職というキャリアに向き合ってみてはいかがでしょうか。
大賀康史(フライヤーCEO)