「子どもに財産は遺さない」と言う母。それはよいのですが、60代で貯蓄が「50万円」はさすがにマズいのではないでしょうか?
親が高齢になってくると、子どもに遺(のこ)す財産について話し合う機会があるかもしれません。親の貯蓄が思った以上に少ないと分かった場合、心配になる人もいるでしょう。 ▼定年退職時に、「1000万円」以上の貯蓄がある割合は日本でどれくらい? 例えば、現在60代である親の貯蓄が「50万円」だとすると、子どもに財産を遺せないのはよいとしても、老後の生活費が足りるのか不安に思うかもしれません。 本記事では、60代の平均貯蓄額や老後に必要な費用とともに、「貯蓄50万円」のリスクや対応策についてもご紹介します。
60代の平均貯蓄額は?
金融広報中央委員会の「令和5年家計の金融行動に関する世論調査」によると、二人以上世帯における60代の貯蓄額は、平均値が2026万円、中央値が700万円となっています。 平均値とは、複数のデータをその個数で割ったものであるため、極端に高い数値があると全体的に引き上げられてしまいます。一方、中央値はデータを小さい順から並べてちょうど真ん中にきたものであるため、貯蓄額を知りたいときは中央値を参考にした方がよいかもしれません。 60代の貯蓄額ごとの割合は、表1の通りです。 表1
出典:金融広報中央委員会「令和5年家計の金融行動に関する世論調査[二人以上世帯調査]」を基に筆者作成 60代で「貯蓄ゼロ」と「100万円未満」の割合を合わせると26.9%であるため、今回の事例のように「貯蓄50万円」という人も、一定数いることが分かります。その一方で「貯蓄1000万円」超が4割以上を占めているため、老後の備えが十分にできている人も多いと考えられます。
「貯蓄50万円」で老後を迎えるリスク
仮に、65歳で定年を迎えて90歳まで生きたとして、生活費がいくら必要になるのかを計算してみましょう。 総務省統計局の「家計調査報告[家計収支編]2023年(令和5年)平均結果の概要」によると、65歳以上夫婦のみの無職世帯における1ヶ月の実収入は、年金を含めて24万4580円、支出は消費支出と非消費支出を合わせて28万2497円となっています。同調査によれば、1ヶ月に3万7916円が不足するため、90歳までの25年間だと1137万4800円が足りなくなる計算です。 貯蓄が50万円しかない場合、定年後の生活費が大幅に不足するかもしれません。