令和の修学旅行、「体験重視」でどう変わった? 定番スポットのプログラムも進化 新たな課題も
ーー現在の課題については、どのように考えていらっしゃいますか。 「学びの旅」としての具現化が進みつつも、これまでの内容を踏襲するにとどまっているケースも少なくありません。 原因の1つには、多忙さを極める教員の働き方が挙げられるでしょう。 現場の先生は、修学旅行を「探究的な学習の実践の場として活用したい」「平和学習など、授業の中では十分に扱えていないテーマに取り組む機会にしたい」といった思いを強く持っています。しかしながら、多忙さゆえ、思いはあっても新しい旅行先を探しづらい現状があります。 多くの地域で、学校側のニーズに応えようと観光協会が中心となり、さまざまな工夫をしたプログラムを作っているものの、なかなかマッチングが進まないことには、もどかしさも覚えます。これまでは旅行会社が間に入り、多くの提案がされていましたが、人員不足の影響もあり、十分に行われているとはいいづらい状況です。 ーー円安やオーバーツーリズムの影響は何かありますか。 それらの影響を受けた費用の高騰も大きな課題の一つです。 交通費や宿泊費が上がり続けるなか、体験プログラムに充てられるのは修学旅行全体の費用のわずか10%にも満たない学校が多いです。その中でできる工夫には限界もありますし、学校や自治体の間で差が開けば生徒たちの体験格差にもつながりかねず、大きな課題だと考えています。 前向きに探究的な学びを実現する多様なプログラムが生まれているからこそ、機会損失とならないようなアクションを考えていくことが求められるでしょう。 (出典) ※1 2024年9月10日~15日に行った保護者のかた向けWebアンケート(回答者281名 ※未回答除く)に寄せられた体験談より ※2 文部科学省「高等学校学習指導要領」P643 第4章 総合的な探究の時間 第3の2「6」
プロフィール 竹内秀一(たけうち しゅういち) 公益財団法人 日本修学旅行協会理事長。神奈川県立、東京都立の高等学校の日本史教諭、都立高等学校副校長を経て校長。都立高等学校の修学旅行実行委員会に所属後、現職。