令和の修学旅行、「体験重視」でどう変わった? 定番スポットのプログラムも進化 新たな課題も
ーー修学旅行の変化には、どのような背景があるのでしょうか。 現行の学習指導要領がポイントです。柱の1つである「探究的な学習」を修学旅行で実践しようとする学校が増加しているのです。 「探究的な学習」とは、生徒自身が問いを立て、課題を発見し、情報収集や意見交換を通じて解決策を探り、アウトプットすることの繰り返しで学びを深めていくもの。この学習の実践で重要なのが「体験」です。 学習指導要領でも「体験活動(中略)などの学習活動を積極的に取り入れること」が示されていますが(※2)、学校の授業の中でできる体験はどうしても限られます。 そのため、修学旅行を探究的な学習の実践の場として位置付けようという試みが広がりつつあるのです。 高校であれば、体験するプログラムに応じて、週1回程度必修科目となっている「総合的な探究の時間」を活用し、事前学習や事後学習を実施しています。修学旅行は、単発のイベントではなく、年間の学習計画の中にしっかり位置付けられるようになってきているといえるでしょう。
あの定番スポットのプログラムも進化
ーー「探究的な学習」の一環として、どのようなプログラムが行われているのでしょうか。 「SDGs」「平和学習」「異文化体験」「企業訪問・工場見学」「震災学習、防災学習」「農業漁業学習」など、さまざまなテーマがあります。地域の観光協会が中心となって、修学旅行を誘致しようと、多様なプログラムが作られています。 (プログラムの例) ● 環境学習:海岸でのゴミ拾いと観察を通じて、海洋プラスチック問題について考える。 ● 震災学習:震災遺構の見学や、被災者との対話をとおして、防災について考える。 ● 農業漁業学習:民泊を通じて生業を体験するなかで、後継者問題などの課題を考える。 これらのプログラムは、今までの修学旅行ではあまり訪れることのなかったエリアも、旅行先となる可能性を広げています。 一方で、今までの修学旅行の定番の観光スポットを探究的に学ぶプログラムも生まれています。 たとえば姫路城では、単なる見学ではなく、文化遺産を守るSDGsやキャリア学習にまでつながるプログラムが提供されています。「なぜ姫路城が現在にまで伝えられ、残されてきたのか」をテーマに、文化財の保護に携わる漆喰(しっくい)職人や技術者とともに見学や作業体験をするなかで交流し、学びを深めています。