「仕事を辞めて専業彼女になりたい」 男女平等の先進国スウェーデンでなぜ「ソフトガール」現象が起きているのか?
スウェーデンで「ソフトガール」と呼ばれるトレンドが物議を醸している。 ソフトガールは、TikTok発のトレンドで、キャリアの追求よりもスローダウン(ゆったり生きること)、セルフケア、そしてウェルビーイング(健康で充実した状態)を重視する精神性を指す。 【画像】極右の現政権スウェーデン民主党は、「ソフトガール」を「個人の自由」として支持 このトレンドは数年前から各国で話題になっていたが、スウェーデンでは「女性が仕事を辞めて、男性パートナーに経済的に依存するライフスタイル」として広がっており、議論を巻き起こしている。 というのも、男女平等の先進国としてのスウェーデンのイメージとは対照的な動きだからだ。 スウェーデンの代表的なソフトガールのひとりである、インフルエンサーのヴィルマ・ラーション(25)は、以前は、食料品店や介護施設で働いていたが、1年ほど前に仕事を辞めた。 以来、在宅で金融関係の仕事をするボーイフレンドに養ってもらう「専業彼女」になり、「私の人生はよりソフトになった。苦労はなく、ストレスも感じていない」と、英メディア「BBC」に語っている。 ボーイフレンドが仕事をしている間、彼女はジムに通い、カフェに立ち寄り、料理をしたりして過ごしており、そんな専業彼女の日常を発信している。 とはいえ、コンテンツクリエイターとして稼ぐ野心はない。 彼女が「ソフトガール」になった背景には、「母や姉、祖母がみな仕事に追われていてストレスを感じていた」ことがあると語っている。
ソフトガールは「一種の憧れ」
2024年8月に発表されたスウェーデン最大の年次若者調査では、7~14歳の少女の14%が「ソフトガール」を自認しており、それが若い女性の間で一種の憧れとなっていることが示唆された。 ただ、ラーションのように仕事を辞めて“専業彼女”になる女性は少数であると、同調査の研究者はBBCに述べている。 だが、このトレンドは、スウェーデンの政治イベントから新聞、公共放送に至るまで、さまざまな場所で社会問題として取り上げられており、国の主要な話題になっている。 このトレンドを男女平等における「後退」だと声をあげる、フェミニスト政党の共同創設者グドゥルン・シューマンは、女性の経済的自立(有給労働へのアクセス、公平な賃金、育児の責任分担など)を損なう可能性があると懸念を示している。 また、若い女性たちはスウェーデンがジェンダー平等を勝ち取るために費やした長年の戦いについて充分な認識を持っておらず、「このトレンドが伝統的なジェンダー役割を美化し、経済的自立を犠牲にするリスクがある」という懸念の声もあるようだ。 一方、ナショナリストで右派のスウェーデン民主党(現政権)は、「ソフトガール」のトレンドを「個人の自由」として支持している。 同党は、スウェーデンのジェンダー平等の枠組みは、女性がキャリアを追求するか、より家庭的な役割を選ぶかのどちらも可能にしていると主張している。