IGT法律事務所・水田修義弁護士 単独インタビュー ~ 既存プレーヤーの枠を超えた事業再生 ~
2024年上半期(1-6月)の企業倒産は4,931件で前年同期から21.9%増加した。コロナ禍の資金繰り支援などで背負った過剰債務が企業を苦しめるなか、債務整理や事業再生の現場では案件への対応に変化が生じている。 東京商工リサーチ(TSR)は、法的整理や準則型私的整理を数多く手がけ、投資ファンドで事業再生などにも携わった水田修義弁護士(弁護士法人IGT法律事務所)にインタビューした。窮境企業の現状や事業再生に求められる枠組みなどを聞いた。 ◇水田修義弁護士 2008年弁護士登録。同年センチュリー法律事務所に入所。2016年4月~12月まで大手リース会社法務部(非常勤)。2017年1月~2021年1月まで投資ファンド法務コンプライアンス室長。2023年4月に弁護士法人IGT法律事務所を設立。
―弁護士を志した理由、キャリアのスタートは
実家が農機具メーカーを営んでいて、4代目として当然継ぐものだと思っていたのだが、大学3年の時に父に「会社を売却する」と言われた。それで将来どうしようか考えていた当時、所属していた金融ゼミでコーポレートガバナンスを扱うこととなった。ゼミの先生から「コーポレートガバナンスの勉強をやるならその前提として商法と民法も勉強しよう」と言われ、経済学部でありながら商法・民法を皆で勉強した。勉強するなかで、弁護士の業務には、「自己決定自己責任」の側面もあり、また世の為人の為になるとも感じ、1年程悩んだ後に司法試験の勉強を始めた。受かるまで弁護士の世界をまったく知らなかったので具体的な進路は迷ったが、司法修習中に図書館で清水直先生の「企業再建の真髄」(※1)を読んで自分のなかでキャリアに対する方向性を持った。 2008年に弁護士登録し、センチュリー法律事務所に入所した。事務所代表の住田昌弘先生がRCC(整理回収機構)の常務などを歴任するなど金融機関とのリレーションに強い事務所だ。活用が広がっていた事業再生ADR(※2)では、当時、申請代理人や手続実施者として相当数を手掛けていた事務所だ。 事務所に入所して初めての案件は民事再生で、入所直後から資金繰り表をみていた。司法研修所では要件事実とか訴訟実務などを学んできただけに「今までの勉強はどう役立つんだ」と思う日々だった(笑)。「弁護士だからこの領域」とすみ分けをする感じではなく、資金繰りサポートからスポンサー探索まで何でもやった。もちろんそれぞれに専門家はいるが、全体を俯瞰してバランスをみながら案件を進めることを一通り経験した。 ※1 2005年5月刊行(商事法務) ※2 2008年11月に私的再生スキーム(準則型私的整理)の1つとして運用開始。根拠法は産業競争力強化法