衆議院の「冒頭解散」過去3回を振り返る 坂東太郎のよく分かる時事用語
この国事行為は「内閣の助言と承認を必要と」する(3条)ので内閣が解散したいとする閣議書が運ばれてくれば要件を満たし、さらに4条で天皇は「国政に関する権能を有しない」と命じているため否とは言えません。しかも首相は内閣の構成員たる国務大臣を自由に任命、罷免できる(68条)権能を持つので、仮に解散反対の国務大臣がいたら罷免して賛成派を任命するか自ら兼務すれば内閣の意思として統一できてしまうのです。 したがって「7条解散」(今回も該当)は、解釈に解釈を重ねた憲法があまり想定していない一種の違憲行為ではないかとの異論は今でもあります。あえて認められるとしても、国会が与野党激突でにっちもさっちもいかなくなったとか、反対に「黒い霧解散」のように与野党が事実上合意した時ならばともかく、そうでない解散は権限の乱用で制約をかけるべきとの見方も改めて浮上していて、総選挙で争点化する可能性が出ています。 ちなみに最高裁は、7条解散を違憲として苫米地義三元衆議院議員が提訴した裁判で、1960(昭和35)年6月8日に「衆議院解散の効力は、訴訟の前提問題としても、裁判所の審査権限の外にある」と判断を避けています。
----------------------------------- ■坂東太郎(ばんどう・たろう) 毎日新聞記者などを経て、日本ニュース時事能力検定協会監事、十文字学園女子大学非常勤講師を務める。著書に『マスコミの秘密』『時事問題の裏技』『ニュースの歴史学』など