『虎に翼』、優三さんとの別れ、花江ちゃんの涙、梅子さんの助言…語り尽くせぬ名場面
生きづらさを感じる人たちの生き様も丁寧に描いた
FRaUwebで、杉本彩さん始め動物愛護に関する問題などを取材寄稿するライターの牧野容子さんも毎朝かかさず『虎に翼』を観て、何度も涙を流したという。 【牧野容子さんが選ぶ、忘れられない、印象的だった場面】 1) 夫・優三が出征していく日に、寅子と優三の二人が変顔の応酬で別れるシーン(第8週) 優三さんの出征の日、一旦、家族で送り出した後に、一人で優三さんの後を追ったトラちゃん。優三さんに取りすがって泣く、というのではなく、距離をとってお互いに変顔を見せ合うのが可愛くて、切なくて仕方なくて、二人が涙を堪えているのに、私が大泣きしてしまいました。もう二度と会えないかもしれないのにこんなお別れの仕方ができるなんて……。二人の心情が愛おしかった。 2) 花岡が亡くなり、失意の轟によねさんが声をかけて、轟が本音を吐露するシーン(第11週) 花岡が死んだことを知り、やけ酒をあおって失意のどん底にいる轟に、よねさんが声をかける。「惚れていたんだろ?」には驚いたけれど、轟も「よくわからないけど、」と素直に花岡への気持ちを吐露。轟と花岡、轟とよねさん、男とか女とかではなく、大切に思える存在、信頼しあえる存在というものを確認できたようなシーンだったと思う。この後、二人が一緒に法律事務所をやっていくことになるという流れも嬉しかった。 3)「原爆裁判」の口頭弁論で国際法学者に放ったよねさんの発言(第23週) 原爆裁判の口答弁論で、原爆そのものを禁止する規定は投下当時も現在も国際法上に存在しないと主張する国際法学者に対して、「原告は『今』を生きる被爆者ですが?」とキッパリ言い切ったよねさん。感情をあらわにすることはないが、魂を込めたよねさんの言葉にグッときてしびれました。 【牧野容子さんが感じた『虎に翼』の魅力】 日本初の弁護士、判事として生きる寅子の人生を追いつつ、現代にも通じる女性の生きづらさだけでなく、男性の生きづらさも描いているところが興味深かった。仕事を持つ女性、家の嫁とされる専業主婦、旧華族の令嬢、朝鮮半島出身の留学生、女として生きることを捨てた人、LGBTや戦災孤児の問題も……。それぞれの生きづらさを感じながらも一生懸命それと戦いながら生きている登場人物一人ひとりの様子を、立場に寄り添いながら丁寧に描いているのが、とても良かったです。