「合戦シーンを見るとは…」藤原隆家が大活躍、刀伊の入寇 「追撃のラインを設定」後世にも評価
自伝のような「紫式部集」につながる勧め
水野:しかし最新回は……まひろ(吉高由里子さん)と大宰府で再会した周明(松下洸平さん)の胸に矢が……という衝撃的なシーンで終わりましたが……。ショックでした……。 たらればさん:びっくりしました……まひろに「帰ってきたら伝えたいことがある」と言っていた時点で嫌な予感はしていたんですが……直秀もそうですが、オリジナルキャラに迂闊に感情移入するとひどい目に遭いますね……。 水野:その前に、『源氏物語』という長文を書ききったまひろが、「もう何かを書く気力もない」という抜けがらのようになってしまっていました。そこで周明から「お前がこれまでやってきたことを残すのはどうだ」という問いかけがありましたよね。これは……? たらればさん:面白い流れでしたね。おそらくこれは和歌集『紫式部集』のことなのでしょう。 『紫式部集』は自選集で、娘時代に詠んだ歌から順に時代に沿って和歌が並べられていて、それぞれ状況説明としての詞書が添えられており、紫式部の自伝のように読めます。 水野:なるほど…! 周明に勧められたことをこの後、まひろはやっていくんでしょうか…。 たらればさん:あと放送は2回ですけどね…! どうたたむのか……。 水野:まったく情緒が追いつきません。
彰子サロンは「週刊少年ジャンプ」だった?
水野:そして赤染衛門(凰稀かなめさん)がいよいよ『栄花物語』を書き始めましたね。『枕草子』や『源氏物語』とは違う、仮名で初めて歴史書を書くんだ……、と意気込みを語っていました。道長の誕生時からではなく、なんと宇多天皇の代から、じっくりと……。 たらればさん:宇多帝の生没年月は西暦867年6月~931年9月で、道長は西暦966年~1028年ですから、だいたいざっくり百年前。現代に置き換えると、石破政権の政治を紹介するのに関東大震災から書き始める……みたいなイメージでしょうか。 水野:壮大な歴史をつむぐことになりそうです。改めて彰子サロンには有能な女房ぞろいだなと思いました。 たらればさん:ドラマ「光る君へ」では、道長が一本釣りでまひろへ帝の気を引く『源氏の物語』を書かせたことになっていましたが、この描写について、ある漫画家さんが「実際は、道長はもっといろんな女房に声をかけて、いろんな作品を書かせていたと思う」と仰っていたんですよね。 水野:ふむふむ。 たらればさん:一条天皇を呼び寄せるために作品を書くのであれば、もっと何人もの女房に書かせた上で、面白いものが生き残ったのではないかと。現代におけるマンガ誌のシステムですね。とてもリアルだし、納得できる推測でした。 水野:たしかに現実的に考えると、保険をかけるでしょうし、そうなりますよね(笑)。 たらればさん:やっぱり『週刊少年ジャンプ』という器と仕組みがあってこその『鬼滅の刃』であり『ONE PIECE』なんじゃないか、ということですよね。すばらしい作品が集まって、才能が競い合って、なかにはすぐ終わる連載も残念ながらあって、そこで『源氏物語』のような作品が生まれる……と。 水野:作品を創作していくというのはそんなに容易なことではない、ということですね。 たらればさん:実際どうだったかはもちろん分かりませんけれど、道長は才女たちを集めていたわけですから、そこでクリエイターたちが切磋琢磨してすごい作品ができた、という考えは、なるほどなぁ、いつの時代も変わらないんだな…と思います。 ◆これまでのたらればさんの「光る君へ」スペース採録記事は、こちら(https://withnews.jp/articles/keyword/10926)から。次回のたらればさんとのスペースは、12月15日21時から、「光る君へ」最終回後に開催します。