料理家なのに鍋を焦がす。つまずいてもいないのに転ぶ。50代の私はいろいろヤバい
料理家として何冊もの本を出し、テレビにも出演。初エッセイ『50歳からのごきげんひとり旅』(大和書房)は12万部の大ヒット。活躍中だったある日、山脇さんに思いもかけぬことが起きました。 【写真】50代の「おいしい旅」を楽しむarikoさんのおすすめ そのときのことを、こうつづっています。 ________ 気持ちよく晴れた日の朝 時、バッタ~ンと転びました。しかも手をつくことができず、胸から。バチン ! とへたくそな飛び込みのような大きな音がして自分でもびっくり。すぐ横に座っていた相方(夫)もびっくり。あまりの激痛に声も出ませんでした。息が止まったか。数秒後、ううう、と唸り声。「なになに、大丈夫 ? 何にひっかかった ?」と怪訝そうな相方。 そう、なぜ転んだのか ? そこが問題です。たぶん、きっかけは相方がやっていたパソコンのコードを「見た」こと。ただ床にあっただけで普通に歩けばひっかかることもないのに、急に視界に入って、おっ! と思ったら、バッタ~ン。 昭和のコントか。なーんにもないところで、そこまで激しく転ぶのははじめての経験でした。3時間後に控えた料理雑誌の撮影の準備に身も心もバタバタ焦りながら出かける直前だったとはいえ、大丈夫か私 ? 肋骨が折れたのか、しゃべっても笑っても痛いけど、手は使える。料理の撮影は手さえ使えればOK。「手をつかなかったのは、おばあちゃんの天からの配慮か。助かったよ、痛いけど」と思いつつ、無事に仕事は終えました。 母に伝えたら、「転ぶのがいちばん怖い、若いときみたいに焦ったらだめよ」と言わ れました。まあ、80代ならそうよねーと、まだ気持ちに余裕があった、何もわかって いない55歳の秋でした。 ________ 今年になってからは階段落ちも経験し、小指を骨折。 数年前に亡くなった母が、還暦じたくを促してくれたような気がして、「60代を人生のご褒美にするための準備」として、この新刊『ころんで、笑って、還暦じたく』(ぴあ)を書いたそうです。 本書の中から、3回に分けて抜粋記事をお届けします。 第1回は、料理も調理道具もどんどんシンプルにです。