なぜ久保建英は東京五輪白星発進の“救世主”となったのか?
若き至宝が歴史を塗り替えた。試合を支配しながらも決定力を欠き、窮地に陥りかけていたU-24日本代表を救ったのは、MF久保建英(レアル・マドリード)の左足だった。 23日の開会式に先駆けて一部競技がスタートしている東京五輪。22日に東京スタジアムで行われた男子サッカーのグループリーグ初戦では、53年ぶりのメダル獲得を目指す日本がU-24南アフリカ代表を1-0で撃破。20歳1ヵ月18日の久保が後半26分に決めた値千金のゴラッソは、日本の五輪サッカー史上における最年少ゴールとなった。
日本の五輪代表で史上最年少ゴール
距離にして40mも遠くにいたMF田中碧(フォルトゥナ・デュッセルドルフ)と目が合った瞬間に、久保の脳裏にはゴールを奪うまでの青写真が鮮明に描かれた。 「田中選手は毎回すごくいい場所を見てくれていて、僕のところへもボールを出してくれるという確信があったので。田中選手が顔を上げた瞬間にはトラップからイメージして、あとは自信を持っていつも通りにプレーしようと思っていました。ボールを持ったら中へ切り返していって、ファーサイドへのシュートを狙おうと」 両チームともに無得点で迎えた後半26分。左サイドで田中がボールを持ったとき、久保はペナルティーエリアの右側にいた。そして、以心伝心とばかりに、サイドを変える山なりのロングパスが「7番」の足元に寸分の狂いもなく落ちてくる。 利き足の左足にボールが吸いつくような絶妙のトラップ。まったく隙がないからか。マーク役のDFスブシソ・マビリソは間合いを詰められない。青写真通りに左方向へ、相手ゴールからやや遠ざかった位置へ久保はまずボールを動かした。 次の瞬間、迷わずに左足を一閃する。カーブの軌道を描いた強烈な弾道はオーバーエイジで参戦している守護神、ロンウェン・ウィリアムズがダイブしながら必死に伸ばした右腕の先をかすめ、左ポストを直撃してそのままゴールネットを揺らした。 2000年シドニー大会のU-23スロバキア代表戦でゴールを決めた、MF稲本潤一の20歳11ヵ月30日を大幅に更新する、日本の五輪サッカー史上における最年少ゴールが森保ジャパンを白星発進に導いた。 「なかなか点が入らず、時間がたつにつれてやっぱり焦りも生まれてきた。連携もちぐはぐになって、みんなもちょっと不安を抱えながらプレーしていたと思うので。その意味では自分が点を取って、チームを楽にすることができてすごくよかった」