空前絶後3,000人のお引越し大作戦、“昭和”なオフィスからの脱却がおじさんたちを“呪縛”から解き放つ?
■約75%の社員が「移転に前向き」、働き方や他部署連携を考えるきっかけに
当初、噴出した通勤問題にも良い影響が出た。同社では新宿への通勤を前提に住まいを決めた人が多く、芝浦移転で通勤時間が長くなるという不満の声が多数あったのだが、トライアル後のアンケートでは「こういうオフィスならちょっと通勤時間が長くなってもいい」という前向きな回答も複数あったという。さらに、「トライアルしたことで、ラッシュを避ける通勤ルートのシミュレーションができた」という声も寄せられた。 また、約75%の社員がトライアルを通じて「移転に前向きになった」「働き方を変えようと思った」とも回答。2巡目を実行中の今、「総じて社員の本気度が高まっている」そうで、春日氏は「トライアルがないまま移転していたらと想像すると、ゾッとします」と苦笑いする。 「移転までの3年間、予算と労力をかけてでもトライアルオフィスを設置するという決断に会社の本気度を感じましたが、様々な変化や効果を得ている今、英断だったと実感しています」(春日さん) もちろん今後もまだまだ課題はあり、「移転がゴールではない」という。 「様々な部署と連携して進めてきて、それはトライアルや移転が終わっても残るもの。会社の進化や成長を考えるとき、こうした組織をまたいだ繋がりは非常に大事です。働き方や他部署との繋がりなど、今後もソフト面に軸足を置いて注力したいと考えています」(春日さん) また、今回得たノウハウは同社にとどまらず、どんな企業にでも活用できそうだ。トライアルオフィスを経てつかんだ成功も失敗も、自ら経験したリアル。物理的な面だけでなく、社員の意識醸成にまでつながるならば、とても大きな価値となる。 「会社ごとに課題や目指すところは違います。ただ一つ言えるのは、オフィス環境や社風を変えるのは会社にとって非常に大きなプロジェクトであるということ。経営も含め、どれだけ全社的に取り組めるかが鍵になります。我々はオフィスビル事業者でもあるので、自ら本社移転で培った経験やノウハウを通じて、移転やオフィスに悩みを抱えるお客様に対して、よりお役に立てるようになったと感じています。ぜひお気軽にご相談いただければ(笑)」(春日さん) 新本社への移転は来年夏。トライアルオフィスよりはるかに規模が拡大する新たな環境で、社員たちがさらにどのような意識変化を起こし、新時代の働き方を実現していくのか。その行く末は、多くの企業にとっても参考になるはずだ。 (文:河上いつ子)