空前絶後3,000人のお引越し大作戦、“昭和”なオフィスからの脱却がおじさんたちを“呪縛”から解き放つ?
■“お試し”引っ越しのために社長直下のチームを結成、「正直、重いなあ…と(笑)」
この“お試し”引っ越し、もとい「トライアルオフィス」を含む新本社移転プロジェクトのため、様々な部署から人員が集められたプロジェクトチーム“グループオフィス戦略室”を結成。社長直下のチームだというが、急きょ抜擢された推進課課長・橋本葉子さんは、「一生に一度の事業に呼ばれたのは嬉しかったですが、これは大変そうだ。やりきることができるのか?という不安もありました」と当時の心境を語る。 同チームの若手社員・林田晃典さんは、「不安もあったけれど、おしゃれなオフィスのキラキラ感は羨ましかった」とのこと。前述の室長・春日さんは「正直、重いなあ…と(笑)」と本音を明かしながらも、「現状と移転の間にひとつプロセスを設け、新本社に近い立地・環境・働き方を体感することで、移転時の混乱緩和と役職員の移転に対する意識醸成を図りたい。また、移転時の課題を事前に抽出・解決したいと考えました」と、決意を新たにしたそうだ。 とはいえ、約半世紀ぶりの本社移転。まったくノウハウがないなか手探りの状態でのスタートであり、未知の試みである。社内で反対はなかったものの、いろいろ不満も飛び出した。 「日頃の仕事で手一杯な中、新宿と芝浦の2拠点になる不便さもあり、しぶしぶ…という社員も多くて。説明会のほか、本部毎に任命されたアンバサダーを通じてステップを踏んで伝え、賛同を得られるよう苦心しました。何にトライして何を新本社に生かすのか、その設計にも非常に苦慮しました」(橋本さん) ■単にカッコイイだけではダメらしい…、管理職や年配の社員からはフリーアドレスへの不満も トライアルオフィスは、2022年11月から翌年3月末までを1巡目、今年6月から来年3月までを2巡目とし、全社員が各2ヵ月、2回にわたって参加。最初に様々なワークスペースを用意したC・D区画で検証され、社員からの意見を次のA・B区画に反映。全社員にもう1度トライアルしてもらい、その意見を新本社の設計に反映するという構想。もちろん、どちらもおしゃれなフリーアドレス(グループアドレス)だ。 実際、最初のC・D区画は「攻めた」というほど洗練された空間になっていた。ところが、トライアルした社員からは「ラボのような無機質なエリアよりも、アースカラーのある少し落ち着いた雰囲気のほうがいい」「椅子はおしゃれだけど長時間座ると体に負担がかかる」「丸いテーブルはミーティングしにくい」「窓際は景色はいいがまぶしくて仕事にならない」「後ろを通られると気が散る、集中できるスペースがほしい」などの指摘が続々。どうも、単にカッコイイだけでは働きやすいわけでもないということがわかった。 そして、もっとも物議を醸したのは、やはりフリーアドレスについてだった。 「管理職や年配の社員からは、『今までは目の前に部下がいたので、状態が見られてすぐ話もできたのに、それができない』と、今までとれていたコミュニケーションがとりづらくなることへの不満が非常に多かったです。一方、若手社員からは『上司に報告したり、同僚にちょっと相談したい時に近くにいない』ことが課題として上がりました」(橋本さん)