<中東対立激化で油価高騰への懸念>日本が短期・長期ですべき石油調達策
制裁下のイラン石油産業
一方、イスラエルを攻撃したイランの石油産業の動向も注視される。10月11日、米財務省外国資産管理室(OFAC)は、イランによるイスラエル攻撃の報復措置として、イランの石油部門への追加制裁を発表した。今次制裁の目的は、イランの軍事費や、イランが中東全域でイスラエルを攻撃する武装組織に資金提供するための財源となる、イランのエネルギー収入を制限することである。 制裁の対象は、イランの石油輸出に関係する10企業と17隻の船舶である。これらの企業はUAEや中国、マレーシア、マーシャル諸島などに拠点を置き、主にイラン産原油を中国の製油所に輸送している。米国は、トランプ前政権が18年にイラン核合意を離脱して以降、対イラン制裁を迂回してイラン産原油や石油製品の密輸に関与する企業に対し、度々制裁を科してきた。 ただ、イランは制裁を受けながらも、重要な財政収入源である石油収入を拡大させてきた。イラン中央銀行によれば、資源輸出額は、制裁再開後のイラン歴1398年(19年3月21日~20年3月20日)の260億ドルから、イラン歴1401年(22年3月21日~23年3月20日)には554億ドルに増加した。 増収の要因として、ウクライナ戦争に伴う資源価格の高騰や、石油輸出量の増加が挙げられる。原油輸出は19~23年の間、65万バーレル/日(bpd)から132万bpdに倍増し、石油製品輸出も29万bpdから41万bpdに増加した。
現在、イランは制裁を理由に、石油輸出国機構(OPEC)プラスによる協調減産の対象外であるため、他産油国が増産を制限している期間を好機と捉え、産油量の拡大を試みている。24年8月、イラン経済評議会は34の油田での石油増産計画を承認した。OPECの月次報告書(※二次情報源)によれば、今年9月の産油量は約332万bpdを記録し、18年の対イラン制裁再開以後、最多となった。 制裁対象のイランから石油を輸入している国は、主に中国である。米国エネルギー情報局(EIA)の試算によれば、23年にイランが輸出した原油全体の約9割を、中国が最終的に輸入した。 中国は米国主導の対イラン制裁に同調しておらず、マレーシアなどを経由してイラン産原油を巧妙に輸入し続けている。米国が幾度となく発動してきた対イラン制裁の効果は限定的であり、中国が買い控えない限り、イランの石油輸出は18年の制裁発動前の水準に回復していくと予想される。