ドンキの格安SIM「マジモバ」誕生の舞台裏 3GB・770円でも収益性は問題なし、レジに並んでいる人に声かけ営業も
ahamoの影響は分からない 数が出ているのは驚安プラン
―― ところで、マジモバと同日にahamoがデータ容量を30GBに増やすと発表しました。あの影響はありましたか。 木野氏 影響は、正直まだ分かりません。仮にahamoの30GBがなかったとして今より売れたかどうかですが、そこはあまり気にしていません。焦ってプランを変えるのもできなくはないですが、今は店頭プロモーションやポスターを準備しているところです。ポスターが25GBなのに実際は30GBだと、お客さまも混乱してしまう。今のプランもいい料金プランだと思っているので、ひとまずこれをやりながら考えていきたいですね。でも、やった方がいいですかね? ―― うーん、難しいですが、やはり同価格帯でマジモバの方が容量が少なくなっていますからね……。そもそもなんでこの容量だったのでしょうか。 木野氏 これもいろいろとPPIH側と打ち合わせした結果です。(最驚プランの)真ん中を25GBにしたのは、20GBだとahamoとかぶるからですが、まさか発表当日に30GBにされるとは(笑)。逆に、3GBは一番安いところを狙って770円です。当初提案したときには990円という価格でしたが、(PPIH側が)もっと安くしたいという意向もありこの価格になっています。 ―― 最驚プランには、15GBもありますね。 木野氏 平均のデータ使用量が大体10GBぐらいで、15GBあればほとんどの人に対応できるからです。ただ、こればかりは正解がないので、とにかくやってみるしかありません。 ―― 驚安プランと最驚プラン、どちらの受けがいいですか。 木野氏 やはり驚安プランは、めちゃくちゃ数が出ています。一方で最驚プランも当初の予想ぐらいは出ています。意外とネットで契約する人も多いですね。
もう少し頑張れば上位MVNOに入れるぐらいの規模にはなっている
―― もう1つ、Wi-Fiルーターもありますが、これはクラウドSIMですよね。どのようなニーズを想定しているのでしょう。 木野氏 最近、電波が悪い(通信速度が出ない)じゃないですか。大手キャリアでも遅いときがあるので、サブ回線のニーズがあります。あとは、光回線も工事に時間がかかったりします。家族全員の通信をまかなうというのでなければ、モバイルWi-Fiで十分。Wi-Fiルーターは「限界突破WiFi」で慣れているので、これからも強めていきます。 ―― ところで、木野さん自身が店頭に立っているのではなぜでしょうか。しかも緑色のスーツで(笑)。 木野氏 プロモーションや料金、端末の意思決定をするのは僕ですが、データを見ているだけでは分からないことが多いからです。例えば、お客さまが7年前、8年前のスマホを使っていたりする。店頭に立つと、「それが新しくなる」と言えば、「おー」と反応があることが分かる。お客さまからは、「いつまでやっているの?」と言われますが、これも一時のイベントになってしまうと安心できないから。店頭に立たないと分からなかったことです。毎日ここにいてもいいぐらいですね。 ―― マジモバも始まり、エックスモバイル全体でも契約者数が増えていると思います。現状、どの程度まで大きくなったのでしょうか。 木野氏 まだ全然、100万回線には届きません。ただし、もうちょっと頑張れば上位MVNOに入れるぐらいの規模にはなっています。純増に関しては他社の動向も大体把握していますが、MVNOでいえば間違いなく上位に入ると思います。 ―― やはり、ホワイトレーベルとしていろいろなブランドを出すことで、ユーザー層が広がっているのでしょうか。 木野氏 言っても、MVNOを使っているのはまだ10%ちょっとですからね。伸びしろはまだまだあります。例えば、今、ドンキに来ている人はほとんどMVNOを知らない。こういう水脈をどんどん広げていきたいと考えています。
取材を終えて:店舗を順調に拡大できれば勝算がありそう
これまでエックスモバイルが組んできたパートナーとは異なり、マジモバを共同で手掛けるPPIHは小売業がメイン。販売方法なども、従来のコラボとは変えつつ、手探りでユーザーニーズを取り入れていることがうかがえた。 3GBの驚安プランは安さを重視するなど、ARPUを狙う他のブランドとは違いも出しているようだ。イオンがイオンモバイルを展開しているように、MVNOと小売業は相性がよく、海外でも同様の事例は少なくない。店舗を順調に拡大していければ、これまでのコラボ以上に勝算はありそうだと感じた。
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