ドンキの格安SIM「マジモバ」誕生の舞台裏 3GB・770円でも収益性は問題なし、レジに並んでいる人に声かけ営業も
ユーザーとコミュニケーションを取りながら要望を反映させることも
―― それにしても、3GBで770円は安いですね。収益性は大丈夫なのでしょうか。 木野氏 もちろん大丈夫です。ギガは少ない(ので同条件で比較できない)ですが、日本通信にはもっと安いプランがあるぐらいですから。楽天モバイルを意識して、そのぐらいの単価にしたいという思いはありました。安くして数を売るのも大事ですからね。ただし、それはやろうと思えばいつでもできることで、うちは高ARPUでしっかり価値を届けたいと考えています。そこで、他のMVNOとの差別化もしていきたい。幻冬舎MOBILEには2万円を超えるコースもありますからね。 ―― 2万円超えですか。大手キャリア以上ですね。 木野氏 はい。幻冬舎MOBILEの「見城徹コース」は約2万円ですが、それなりに数も出ています。確かに携帯電話料金が2万円というと高いですが、付加価値が価格に見合っていると思ってくださる方がいるということです。もしくは、これでも安いと思っているかもしれません。 ―― ということは、マジモバでもやはり最驚プランを主力にしていきたいというお考えでしょうか。 木野氏 ビジネス的に高いARPUを狙いたいというのはありますが、そこはアジャイル的にやってみて、反応を見ながらですね。売り方や営業方法は、そこに合わせて変えていくしかない。手探り状態でいろいろなことをやっています。例えば、僕のSNSでいろいろなキャンペーンを打ち、ドンキやユニーのアカウントに拡散してもらうというようなこともしています。ユーザーともコミュニケーションを取りながら、要望を反映させることもあります。ギガの繰り越しをしたいというコメントがあったので、既にそれも入れています。
レジに並んでいるお客さんに声を掛けて営業をすることも
―― サービスが始まったばかりですが、もう新機能を入れたんですね。 木野氏 はい。SNSでアンケートを取ったら数千件の回答がありましたが、その中でトップ3に入っていたのが繰り越しだったので、即対応しました。もともと、やるつもりはなかったのですが。X(旧Twitter)だと20代、30代の方が多く、それなりのリテラシーがあるからですね。 一方で、店舗での販売になると高齢の方も多く、繰り越しと言われても「はて?」となってしまいます。こういうところだと、回線を変えるというより、大きくて見やすくてきれいなスマホにしたいという方もいるので、シャープの「AQUOS wish4」を無料でお配りしています。5000円分の商品券をプレゼントすることもあります。 昨日からやっているのは、レジに並んでいる方にお声がけして、「このお会計を無料にします」という営業です。これで話を聞いてもらうことができます。こういうことをいろいろとやりながら、何が刺さるのかを毎日試しています。 ―― それは木野さんがやっているのでしょうか。いきなりレジに緑のスーツの人が来て話しかけてきたら、かなりビックリすると思います(笑)。 木野氏 いやいや、さすがに僕じゃないです。通報されてしまうので(笑)。 ―― 店頭での販売を始めてみて、手応えはどうでしょうか。 木野氏 PPIHのブランドになるので数は言えませんが、手応えは感じています。カウンターはまだ三郷と成増だけですが、10月7日から1カ月ぐらいかけて、順次全国の店舗に什器やPOPを入れていく予定です。その店舗のQRコードから申し込んでいただく形を取ります。 ―― 店舗だとその場で契約できますが、こういったカウンターは広げていくのでしょうか。 木野氏 現状は2店舗(※取材後にMEGA ドン・キホーテ福重店も追加)ですが、中にはうちの店でもやってみたいと手を挙げてくださっているところもあります。われわれだけだと全ての店舗は難しいですが、三郷や成増とジャンルが違うところだったり、観光客が多いところだったりと、カテゴリーを分けてブース展開、店舗展開していく可能性はあります。 ―― 逆に、今後、エックスモバイルの店舗でマジモバを契約できるようになることもあるのでしょうか。 木野氏 エックスモバイルの店舗がPPIHのテナントとして入っていくことを増やしたいと考えています。それなら、スタッフを置いて端末も売れるからで、加盟店にも呼び掛けています。現在、端末は買えませんが、将来的にはやれるようにしませんかとお声がけはいただいています。店舗があれば、majicaの使い方を教えたり、カードの契約を取ったりもできますからね。