後楽園ホール開催目前! 女子プロレス我闘雲舞の代表、さくらえみが振り返るタイでの旗揚げから現在
――あの感じ、面白いですよね! さくら:今は自分にフォーカスする時代だけど、人とは関わりたい。でも人には関心がない。この難しさを、全部ダレジョは表現できている気がするんです。人間関係、煩わしいですよね。ひとりになりたいけど、みんなと一緒にいたい。でも、時間が来ればさようなら。本当に最高だと思います。 ――練習が終わったあと、円になってひとりずつ感想を言いますよね。自分の気持ちを人前で言う機会もなかなかないので、あれもすごくいいですね。 さくら:実は厳しいルールがあって、前の人と同じことを言ってはいけない。先に自分の意見を言うのは難しいけど、先に言わないと同じことを言えないからハードルが上がっていく。3歳の女の子がいて、「楽しかったー!」と言うんですけど、「もう同じことは言えない」と思うんです。この"楽しかった"に、自分の"楽しかった"は勝てないでしょうから。 ■さくらえみは「0から1」を作るが、駿河メイは「0から0」を作る ――今、大活躍している駿河メイ選手もダレジョ出身ですね。 さくら:彼女はデビューした時、ずっと一緒に練習してきた仲間がいました。デビューする前から応援してくれる人たちがいたことは大きかったかなと思います。 ――メイ選手が入ったことが、我闘雲舞にとってものすごく大きかったのではと感じます。 さくら:そうですね。でも6年前を思い起こせば、彼女もただの中学生みたいな感じでした。彼女が特別光っていたというわけではないです。いろんな人との関わり合いのなかで磨いていただいた感じだと思います。 ――「天才」と言われていますが、もともと才能があったわけではない? さくら:自力で食べられるか、休めるかが大事なんです。そういった意味では、食べて休む天才でしたね。
――メイ選手をレスラーとしてどう評価していますか? さくら:私のことを「0から1を作る人だ」と言う人は多いんですけど、それは凡庸です。メイは0から0を作ります。私はその人のいいところを見つけて伸ばそうとしますが、メイは「ただ隣にいる人」なんですよ。それができるというのは本当に強くて、だからこれからの我闘雲舞を任せていくんだろうなという感じはあります。私は自分のライバルを作ろうとしてメイがここにいてくれますが、メイはずっとライバルに困らないと思います。自然と周りに人がいるレスラー。うらやましい。孤独になれ! ――0から0を作る、と言うと? さくら:0を"作る"というのは概念的な表現ですが、彼女は相手のために何かをしてあげることがないんです。その人が自分で芽を出すまで、隣にいてあげる。私は早く"出荷"しないといけないから、その人のいいところを見つけたら、そこを引っこ抜いて栄養剤をぶち込んで、なんとか"商品"にしようとするんですけど、彼女はそうじゃない。 相手のペースで居心地のいい場所を作ってあげて、力で伸びてくるのを待てる人です。だから悔しいけれど、私はアメリカでの時間が長くなるし(※2021年8月よりAEWに定期参戦中)、これから団体は"メイ色"に染まっちゃいますね。悔しい。クソー! (後編:我闘雲舞は「プロレスに疲れた人に観に来てほしい」後楽園ホール大会と、対戦相手・駿河メイへの思い>>) 【プロフィール】さくらえみ 1976年10月4日、千葉県君津市生まれ。1995年8月17日、IWA・JAPAN富山県高岡テクノドームでの対市来貴代子戦でデビュー。1999年6月、FMWに入団。2004年10月、我闘姑娘を旗揚げ。2006年6月、アイスリボンを旗揚げ。2009年、東京スポーツ新聞社制定・プロレス大賞「女子プロレス大賞」を受賞。2012年9月、バンコクで我闘雲舞を旗揚げ。2020年3月、配信特化型団体チョコレートプロレスを旗揚げ。2021年8月より、米国AEWに定期参戦中。現在、第5代スーパーアジア王座のベルトを持つ。156cm、68kg。X:@EmiSakura_gtmv @sakura_gtmv
尾崎ムギ子●取材・文 text by Ozaki Mugiko