生涯の相手はただひとり? 運命の人とのソウルメイトは存在するの?
ほとんど宗教に近い恋愛観
その名もずばり、『Soul Mates(ソウルメイト)』という著作があるアメリカ人作家のトマス・ムーアはそう信じている。修道院で12年間過ごしたあと、スピリチュアルな問題の専門家を自称するようになり、各地で講演を行なっている作家はその理由を次のように説明する。「ソウルメイトとは、あなたの奥底に隠されている自我、あなたの魂そのものに触れてくる相手です。単に感情だけでなく、あなたの存在全てに基づいた関係なのです。すべてが関わります。気持ちが結びつくだけでなく、魂同士の結びつきのようなものなのです」 プラトンの教えを思い出させるような定義だ。ソウルメイトの概念を最初に広めたギリシャの哲学者は『饗宴』の中で、人間が2つの顔、2つの性、4本の足、4本の腕を持つ時代があったと語る。そこにギリシャ神話お定まりの悲劇が起こる。貪欲な人間は神々の住むオリンポス山に足を踏み入れようとし、主神ゼウスの怒りを買った。ゼウスは罰として人間を2つに引き裂き、完全な充足を得るには、自分の片割れを見つけなくてはならない運命を与えた。この寓話がその後、何十世紀にもわたるロマンスや愛の概念を育んだ。いまもなお、たくさんの人々が地球の人口80億人の中から運命の人を探したいと思っている。「ほとんどの人にとって、"ソウルメイト "とは、自分と出会って一緒になる運命を持つ人のことです。魔法を信じるようなものですが、私は魔法に対して肯定的な考えを持っています。それに愛というものは魔法が多く作用していると思っています」とトマス・ムーアはコメントした。彼がそう思うようになったのは、ひと目惚れしたとか、ひと目見ただけで運命の人と悟った等の体験談を見聞きしてからだ。 今回、10人ほど会った取材相手も皆、異口同音に自分たちの関係が知性、感情、性的な面などあらゆる点で調和していると語っている。そして自分のパートナーは「安らぎの源」、「ふたりの存在の基盤」、「大小の幸せの源」なのだと言う。恋愛関係を専門に研究する心理学者で心理療法士のヴェロニク・コーンは、こうした人たちの存在を次のように説明する。「19世紀以来、私たちはロマンティック神話にどっぷり浸かってきました。今日、解体する社会を前にしてその気持ちは強まっています。私たちは自分を癒したい、安心できる場所を見つけたいのです」。取材相手は皆、ほとんど宗教に近い恋愛観を持っていた。いかに「運命的な出会い」をし、「精神的なつながり」があるかについて語る。ひたすら美しく、愛情に満ちた彼らの恋愛話は現実を美化しているように思える。だが彼らが少数派なのではない。2021年4月に世論調査機関OnePollが実施した調査*によれば、フランスの未婚者の56%が、ソウルメイトの存在を信じている。