生涯の相手はただひとり? 運命の人とのソウルメイトは存在するの?
絶対的なものを求める重さ
だが信念というものは重たかったりする。独り身の人の30%が、真実の愛を逃してしまうかもしれないプレッシャーを感じると答えている*。そこから漠然とした不安もうまれる。「絶対的なものを求めるあまり、あまりにも多くの人が、目の前にある関係やそこから得られるかもしれないものに対して自分を閉ざしてしまうのです」 と心理学者のヴェロニク・コーンは嘆く。なんと残念なことだろう。しかも科学者の話を信じるならば、相性の良い相手はたったひとりではなく、たくさんいるはずなのだそうだ!『The Life-Changing Magic of Numbers(原題訳:人生を変える数字の魔法)』の著者である数学者ボビー・シーガルは、12の因子(年齢、性別など)を組み込んだアルゴリズムを使って、フランスでは未婚者1人に対して相性が完璧な相手が30人いることを論証した。 心理学者のヴェロニク・コーンもソウルメイトという概念をかなり懐疑的に見ている。「カウンセリングで、今の相手が自分のソウルメイトだと確信している人をたくさん見てきました。運命によって結ばれたと思いこんでいるため、きちんと関係を築き、強固にし、維持するために必要な努力をすっかり怠っているのです」と嘆く。心理学者によれば、これは期待に応えなければならないという強いプレッシャーをカップルに与えるものだし、最悪な場合、共依存に陥って有害な関係となり得る。 39歳の翻訳家、イクラムは7年間、仲良し夫婦を続けてきたのに、ほぼ1年前破局した。破局するまでイクラムは何も気づかなかった。「完璧な夫婦だと思っていました。ケンカもほとんどせず、出会った日のように愛し合っていました。いつでも頼りにできる相手で、彼が調子いいと私もそうでした」と振り返った。だが相手はそうしたお互いの近さがまさに息苦しかったようだ。彼は、ふたりの人生が夫婦関係に終始していると感じていた。「幸せになれる唯一の男性を見つけたと確信していたのに、彼を失ってもう終わりだと思いました。死にたかった。ソウルメイトはひとりだけだから、もう死ぬまで独身でいるしかないと絶望しました」とイクラムはその時の気持ちを語った。 だがある友人と話すうちにイクラムは発想の転換をした。「幸せになれるかどうかは自分次第だと気づいたのです」と彼女は心境の変化を説明した。心理学者のヴェロニク・コーンは、「一緒に幸せになれる人を見つけようとする態度は有益に思えます。でも相手が見つかれば幸せになれると思うのは違います」と指摘する。幸せになるカギは自分の中にあるのであって、相手を探して得られるものではない。「自分が満たされる手段を外に求めてはいけません。逆に自分自身を受け入れ、さらに、常に満たされた状態はないことも受け入れなくてはなりません。私たちは常にゆれ動く存在なのです」とヴェロニク・コーンは言った。 運命、カルマ、恋の輪廻転生、ひと目惚れ、ソウルメイト......それをどう呼ぼうと、愛とはなにかを決めるのは人それぞれだ。しかし、運命にせよ自分の選択にせよ、愛のルールは変わらない。相手だけがすべてという関係になってはいけない、そして夫婦関係を継続するための努力を怠ってはならないのだ。 *2021年4月20日から23日にかけて、フランスの出会い系サイト「Badoo」の未婚ユーザー1,000人を対象に実施された調査。
text : Caroline Lumet (madame.lefigaro.fr)