公判で語られたドンファンと元妻「55歳差婚」の内幕 突きつけた結婚3条件と覚醒剤疑惑 紀州のドンファン公判 被告人質問詳報
被告「ないです」
野崎さんの死因は急性覚醒剤中毒。これまでの証人尋問や証拠調べで焦点の一つとなったのは、被告と覚醒剤との接点だった。
証人として出廷した薬物の密売人は、同年4月上旬に「覚醒剤入りの封筒を被告に渡し、十数万円を受け取った」と証言。この密売人の仲間は「渡した中身は覚醒剤ではなく、偽物の氷砂糖」と一部を打ち消したものの、密売人に接触を図ったこと自体は確かだとみられていた。
被告「社長(野崎さん)に『覚醒剤でも買ってきてくれないか』と頼まれ、20万円を受け取った。真に受けずに放置していると催促されたため、密売サイトで注文した。社長に渡すと感謝していたが、渡した翌日に『使い物にならん。偽物や。もうお前には頼まん』と言われました」
証人尋問では野崎さんが経営していた会社の元従業員や、被告の前に野崎さんと婚姻関係にあった女性らが出廷。いずれも野崎さんに覚醒剤を使用する様子はなかったと断言しており、内容が分かれる形となった。
■離婚をめぐる悶着
野崎さんが被告との離婚をどれほど真剣に考えていたかも裁判のポイントとなっている。検察側は冒頭陳述で「完全犯罪で莫大(ばくだい)な遺産を得ようとした」と指摘し、野崎さんから離婚され得る状況だったことが動機の形成につながったとしていた。
これに沿うように、元従業員は「結婚後間もなく野崎さんは被告の態度に不満を示し、『離婚する』と漏らすようになった」と口をそろえていた。
こうした証言に反論するように、被告が述べたのは同年5月上旬の出来事。田辺市で同居するよう迫る野崎さんに、「一緒に住まない約束を守れないなら、もう結婚生活を続けられません。離婚します」と電話で告げたところ、「帰ってきてください」と頼まれたという。
被告の前に野崎さんと結婚していた女性は法廷で、「おはよう、おやすみの感覚で『離婚したい』という人だった」として、「話がコロコロ変わるのでコロちゃんと呼んでいた」と振り返っていた。