世界で20億回読まれたマンガ『喧嘩独学』、貧乏男子の成り上がり物語生んだヒットメーカーに聞く
昨今のマンガやアニメでは、一度死ぬ、または別の世界に転生して人生をやり直す「転生モノ」が人気だが、主人公が現世界にいるまま、“あるきっかけで身体や考え方が「新しく変わっていく」ストーリー”で話題を集めているのがLINEマンガ7のオリジナル作品『喧嘩独学』だ。弱者である主人公が不良やヤンキーと戦い成り上がっていく喧嘩ストーリーに、「一気に読み進めてしまった」という声が続出。4月からアニメ放送もしており、「おかわりしにきた」というファンも。世界累計閲覧数20億回を超えるヒット作を生み出した原作者のT.Jun氏と、作画担当の金正賢氏に話を聞いた。 【漫画】世界累計閲覧数は20億回! 恥ずかしい姿を動画に晒された貧乏男子高生、壮絶ないじめを乗り越え喧嘩で成り上がるまで
■世界で20億回読まれたマンガ、貧弱な主人公が「喧嘩動画」で人生を逆転
母子家庭で育った高校2年生の志村光太が、あることを機に「喧嘩」をテーマとした動画で脚光を浴び、“ニューチューバ―”として人生を逆転させていく。喧嘩の知識がない光太が、『闘鶏』と名乗る男による喧嘩を教える動画を発見し、動画通りにトレーニングし次々に勝利を収める。次々と現れる格闘技の強者やライバルたちとの喧嘩シーンや、リアリティのある動画配信の裏側なども描かれ、「没入感がすごい」と多数の読者を獲得している作品だ。 ――世界中で人気を集めている『喧嘩独学』ですが、貧弱な主人公が動画配信サイトで喧嘩を独学し成りあがっていく…というユニークなストーリーはどんなところからアイデアが生まれましたか? 【T.Jun】幼い頃から“学園モノ”が好きで愛読していましたが、「彼らはなぜ喧嘩するのだろう」という疑問がずっと頭の中にありました。そのため、喧嘩をする理由を明らかにしたいと思ったんです。そこで、本作は、貧しい生活からの解放、つまりお金に目的を置いたストーリにしたいと考えました。ちょうど当時、YouTubeが流行り始めたころで、「もし喧嘩するとお金がもらえる番組があったら、果たして自分は参加するだろうか?」と考えたことがありましたが、そんな私の妄想を描いたのがまさに『喧嘩独学』です。 ――喧嘩シーンが多く登場する作品ですが、作画で心掛けたことや参考にした作品、動画(YouTube)などありましたか? 【金正賢】やはり「喧嘩」が重要な素材となっている作品なので、「喧嘩」の生々しさを表現することを意識していました。喧嘩中の臨場感や迫力はもちろん、キャラクターが感じている苦痛までしっかり伝わるのか考えながら描きました。これは私が今まで読んだすべての作品から様々な影響を受けていると思います。例えば、一人ひとり様々な感情が豊富に描写されていた、藤沢とおる先生の『GTO』(講談社)から、大きなインスピレーションを受けました。 ――『外見至上主義』や『喧嘩独学』など、数々のヒット作を生み出してきたT.Jun先生ですが、読者の心を掴むストーリーを生み出すための独自の法則はありますか? 【T.Jun】法則というわけではありませんが、私の頭の中にあるアイデアが世の中に出た際に感動や衝撃を与えることを想像しながら作業しています。『喧嘩独学』は、動画配信サービス(作中では「ニューチューブ」)で喧嘩シーンを配信することでお金を稼ぐ少年が成長していくストーリーです。まずはそういったストーリーラインの構想からはじめ、その後に具体的な人物や状況、シーンなどを創作していきました。私自身が自分のストーリーに対する“確信”を持って作品を描くと、作業はとても楽しくなります。