世界で20億回読まれたマンガ『喧嘩独学』、貧乏男子の成り上がり物語生んだヒットメーカーに聞く
■人気の“成り上がり”ストーリー、主人公の強さや劇的な成長を見せたい
――『喧嘩独学』は日本で5億回(2024年5月時点)、世界で20億回(2023年12月時点)の累計閲覧数を記録しています。ここまでのヒット作となるために、お2人がこだわった部分は? 【T.Jun】すべての作品に対して言えることですが、この作品は特に、キャラクターの特徴をいかに生かすか本当に深く悩みました。魅力的な悪役が必要だと考えましたが、だからといって悪人を美化するのではなく、喧嘩にも理由が必要であるように、彼らが“悪”にならざるを得ない理由を明確に表現することを、努力しました。そのため、悪人として登場した敵キャラクターが仲間になるような展開も可能でしたし、登場する様々なキャラクターが読者に愛されることができたんだと思います。 【金正賢】作画作業を行なう際、最も気をつけた点はやはり「この人物が生きているか」です。どんなに面白いお話でも、自分の手で描いた人物が「生きている」と感じなければ、作品の面白さは伝わらないと考えているからです。 ――主人公がいじめに遭っていたところから成り上がっていくストーリーは、T.Junさんの『外見至上主義』にも通じるところがあります。こういった「人生やり直し」のストーリーがヒットする理由は読者のどんな心理があると思いますか? 【T.Jun】人気のある少年マンガのキャラクターの特徴は、「強い」もしくは「強くなる」の2通りがあると思います。『外見至上主義』と『喧嘩独学』は、生まれ変わりを扱った転生もののように、「人生を一からやり直す」というよりは、とあるきっかけによって主人公の身体や考え方が「新しく変わっていく」ストーリーのマンガです。このような新しい変化の過程のかなで、先ほどお話しした人気キャラの特徴である強さや劇的な成長を見せるために努力しました。読者の方々はこのような部分を気に入ってくださったのではないかと思っています。 ――世界中の読者を魅了している本作ですが、横読みマンガの歴史が長い日本でも、webtoonである本作がヒットした要因はどこにあると思いますか? 【T.Jun】「学園モノ」という親しみやすいジャンルの作品なので、まずは気楽に見てもらえたのではないかと思います。縦・横といういったマンガの形式は関係なく、読者を惹きつける力が「学園モノ」にあると強く感じるのですが、「学校生活」や「学生時代」は、世界の多くの人々が直接経験する共通の思い出ということもあるのではないでしょうか。そのような観点で学生時代を扱っている『喧嘩独学』も多くの読者の方々の共感を得ることができたと思います。さらにそれだけでなく、時代に合わせて動画配信サービスを活用するというコンセプトも、面白いと思ってもらえた要素ではないかと思います。 ――原作は先日完結を迎えましたが、描き終えてのお気持ちをお聞かせください。 【T.Jun】何よりも、4年以上『喧嘩独学』を手掛けることができて幸せでしたし、いただいたたくさんの応援と励ましに感謝の気持ちでいっぱいです。大変だった瞬間ももちろんありましたが、愛情を込めて育てたキャラクターが特に多い作品なので、その分完結に寂しさもありました。これからも、より面白い作品を通じて読者の方々にまたお会いできるよう努力していこうと誓います。 【金正賢】私は、200話を超える長編作品の連載が初めてだったので、大きな山を越えたと思いました。作家としてステップアップできたという思いで胸がいっぱいです。