発電最大手JERAが、電力取引で「相場操縦」。4年半もルール違反続け、電力ユーザーの利益侵害も
JERAの奥田久栄社長は11月27日の記者会見で、東洋経済記者の質問に対して次のように答えた。 「私自身は2023年10月に取引システムの改修が行われる直前に、本件事案について知った。社内調査により、前年の2022年1月には東日本プラント運用センターの長が認識していたことが判明し、そこから私ども経営者が知るまでに相当長い時間がかかった。現場の問題の深刻さに対する認識に甘さがあったことは事実。教育も含めて(再発防止を)徹底していきたい」
市場を歪め、新電力会社などの経営を悪化させたのではないかとの指摘については、「未拠出は量としてはそれほど多くないが、(市場取引に関する)データを持っているわけではないので私どもでは十分に検証できない」と回答した。 ■JERAの行為は市場高騰にどう影響したのか? JEPXのスポット市場では、2020年12月から翌2021年1月にかけて、過去に例のない価格高騰が生じた。1月13日にはスポット市場での1日の平均価格が1キロワット時当たり約154円となり、平時の約10倍以上に跳ね上がった。果たしてJERAの相場操縦はこの時の価格急騰にどの程度影響しているのか。
電取委はJEPXのスポット市場価格が史上空前の高価格に急騰したことを踏まえ、2021年に専門家による会合を開催し、事務局による調査や大手電力各社へのヒアリングを実施した。 その結果をまとめた2021年4月の報告書ではJERAを含む大手電力各社の取引行為について、「相場変動を目的とした売り惜しみ等の問題となる行為があったとの事実は確認されなかった」という結論に至った。今にしてみれば、原因究明に甘さがあったと言えないだろうか。
この時期も含めて、JERAによるルール違反状態は断続的に続いていたと見られるが、相場急騰については「LNG燃料制約によって生じる発電機の出力制約の増加」や、新電力などによる高値の買い札などが主因であるとされた。電取委も今回の調査でわかったこととして「この時期のJERAによる問題行為の件数は片手に収まる範囲だった」(篠崎氏)とする。 これに対して、NPO法人原子力資料情報室の松久保肇事務局長は、「JERAがそれ以前からルール違反を続けたことで需給の逼迫がいつでも起こりうる状態になっていたと考えられる。電取委の見立てには甘さがある」と批判する。