発電最大手JERAが、電力取引で「相場操縦」。4年半もルール違反続け、電力ユーザーの利益侵害も
東洋経済記者の取材に応じた電取委の篠崎由梨・取引監視課・取引制度企画室室長補佐によれば、「影響が大きかったと考えられる特定の3日間での影響額は総額約40億円にのぼる」という。 一方で、JERAの不正行為は主に春や秋など送電線の補修作業が集中する「低需要期」に多かったともいう。卸電力市場の価格がかつてない水準に急騰した2020年度冬期(2020年12月~2021年2月)においては問題の事例がさほど多くは見当たらなかったことから、「この時期の価格を著しく変動させていたとは言いがたい」(篠崎氏)。
とはいえ、約4年半にわたっての市場への影響の全容については現時点では未解明だ。加えて、問題の存在をわかっていながら是正せずに放置していたことも重大だ。 JERAでは東日本プラント運用センターと呼ばれる部署が東京エリアでの入札業務を担当していた。同センターでは、2019年4月時点で余剰電力の全量を供出していない状態であることを認識していた職員が存在していたことが、問題発覚後のJERAの社内調査で判明した。また、遅くとも2022年2月までに責任者である同センター長も問題を認識していた。にもかかわらず、その後1年以上も問題が解決しなかったことも明らかになった。
■JERAは利益目的ではなかったと釈明 電取委は、JERAが東日本プラント運用センターなど需給関係の業務を行う部署を対象として実施したアンケート調査の結果にも着目した。 JERAによれば、「当社がスポット市場において余力の全量を供出しない場合、“市場”に対してどのような影響があると思いますか」という質問に対する回答として、「市場価格が高くなる」「市場に影響を与える」といった回答が約70人の回答者の大宗を占めていたという。ただし、この質問は今回の未入札事象と切り離して一般化した質問だったとJERAは説明している。
今回の問題の重大性についてJERAはどのようにとらえているのか。 電取委の業務改善勧告の直後にJERAが発表したニュースリリースでは、「本事象が(4年半という)長期間にわたり継続したのは、当社の体制・ルール整備や教育・研修等に不備があったことに起因するものと考えております」と記されている。そのうえで「利益を享受する目的で相場操縦を行う意図はなかったことを確認しております」と悪質性を否定している。JERAは業務改善勧告の発表後、記者会見を行わず、ニュースリリースの配布にとどめた。