薬が5種類を超えると「一気に高まる」リスクとは?
先進国のなかで唯一と言ってもいいほど、がんによる死亡者数が増加中の日本。免疫力が下がると脳卒中や心筋梗塞よりも、がんで亡くなるリスクが高まると言われているが、この免疫力の大敵となるのが、食べたいもの、飲みたいものを我慢するという「ストレス」だ。日頃の食生活で我慢を強いて、さらに薬を大量に飲ませる日本の医療がいかに危険なのかを、和田秀樹医師が解説する。本稿は、中尾ミエ・和田秀樹『60代から女は好き勝手くらいがちょうどいい』(宝島社)の一部を抜粋・編集したものです。 【この記事の画像を見る】 ● かつて死因の1位だった脳卒中が 日本ですっかり激減した理由 和田:実は楽に生きることが健康的にも良いというきちんとした医学的な根拠もあるのです。 1951年から1980年までの日本人の死因の第1位は脳卒中だったのですが、当時はろくな治療法がありませんでしたから、基本的には血圧を下げるという治療・予防方針がとられました。 しかし、1964年前後まではよい血圧の薬がありませんでしたので、結局は食事指導・改善が中心だったのです。いわゆる塩分を控えなさいという減塩運動もこの頃から盛んに提唱されるようになりました。そのうちに使える薬が増えてきて、検査して数値が高ければ薬が処方されるようになりました。 また戦後、日本人の食生活も欧米化に伴って次第にタンパク質の摂取量が増えてきました。これに伴って、血管が丈夫になってきたおかげで、脳卒中そのものが減ってきました。その結果、がんや心疾患に比べると、脳卒中は日本人の死因のトップ5にすら入っていません。老衰や肺炎よりも少ないくらいです。 ですから日本人はもはや脳卒中を死因としてそこまで恐れる必要はないのですが、いまだに脳卒中恐怖症が続いており、塩分を控えて薄味のものを食べている人がたくさんいるのです。
和田:その後、今度は1980年代からアメリカで心疾患を撲滅しようという動きが本格化しました。実はアメリカでは死因のトップがずっと心筋梗塞だったのです。そこで体重を減らし、コレステロール値を下げるために、なるべく肉食を減らしていく方向に舵を切りました。 そもそもアメリカ人は肉の消費量が日本に比べてとても多かったのです。1980年当時、アメリカでは1日300グラムの肉を消費していました。 ● 我慢によるストレスは免疫の大敵 がんで死亡するリスクが高まる 和田:同時代の日本だとわずか70グラムだったのですが、日本の愚かな医者たちが、アメリカの医者が肉の摂取量を減らせと言っていることをそのまま真に受けて、同じように日本でも肉を減らせと言いだしたのです。 ところが、日本人で心筋梗塞で亡くなる人は、がんで亡くなる人のわずか12分の1くらいしかいないわけですよ。1980年頃には日本人にとって、脳卒中も心筋梗塞も取るに足らない病気になっているのに、過去の事例やアメリカの医療界にひきずられて、ずっと恐怖症が続いていたのです。