薬が5種類を超えると「一気に高まる」リスクとは?
和田:私は血糖値は300、血圧は放っておくと、上は220くらいある。だから薬で170まで下げてはいるんですが、その程度の数字であれば、わりと頭が冴えるんですよね。仕事もたくさんできますから、これくらいの水準に調整して普段は過ごしています。私にとってはそっちのほうが健康だと思えるわけです。 ● 薬の種類が多い日本 5種類超の服薬は要注意 中尾:このあいだ、できたばかりの新しい病院に行って診察してもらったのですが、そこの先生には「薬はなるべく飲まないほうがいいですよ」と言われました。 和田:それは良い医者じゃないですか。 中尾:だからもう信じてしまって、「この人、いい医者だわ」と思いました。 それまで何も疑問に思わずに処方されて飲んでいた薬について、「今まで、これをもらっていたんですが」と尋ねたら、「ああ、これはいらないですよ」なんて言われました。「なるべく飲まないほうがいい」と言われて、この人信用できるなと思いました。 和田:そうですね。まずアメリカの例で言えば、金の切れ目が医療の切れ目だというところもあるので、お金が払えなければ薬も出ないですし。他方でヨーロッパでは本当に高齢者には薬を飲ませないですね。むしろ害のほうが大きいと考えられているようです。これに対して、日本の医者のいちばん悪いところというのは、中尾さんがおっしゃられているように、薬の種類が多いことなんです。
中尾:本当にそうですね。 和田:飲んでいる薬の種類の数と転倒リスクの相関関係を調べた統計があるのですが、飲んでいる薬が4種類までの人は、だいたい5人に1人が複数転倒の経験があるそうです。これが飲んでいる薬が5種類を超えると、一気に4割くらい、半分近くの人が複数転倒の経験があることがわかっています。 つまり、飲む薬の種類が5種類を超えると一気に転倒リスクが高まるわけですね。逆にまったく薬を飲んでいない人は、わずか3パーセントしか転んだ経験がないのです。 年を取ってくると転んだことをきっかけに足腰の骨を折ってしまい、そのまま寝たきりになる例が非常に多いのです。寝たきりになると一気に体力が減退し、老化が進行しますから、健康寿命にとっては大きなリスクになります。 ですから、私はもう無条件に薬は4種類までと決めています。本当は4種類でも多いくらいなのですが、5種類を超えると4割もの人が転んでいるとなると、とても怖いですよね。 にもかかわらず、日本では薬をたくさんくれる医者のほうがいい医者だと思っているようなのです。
中尾ミエ/和田秀樹