「新しい家族のかたちを提案したい」ドイツ在住作家が“パッチワークファミリー”をテーマに絵本出版
公的機関や著名人の後押し受け「必要としている人に届けていきたい」
読者からは「読後、フワッと心が軽やかになる」「絵本でよく描かれている家族に当てはまらなくても『かわいそうな子』ではないと感じられた」などのポジティブな言葉が寄せられている。しかし、絵本を手に取るのは、このテーマに問題意識を持っている人やLGBTQ当事者に限られているそうだ。 「無名の新人作家が描いた絵本、しかも珍しいテーマなので手に取ってもらうまでにバリアーがあるんです。読んでもらうためには、自ら思いを伝えていって、後押ししてもらうことが必要だと思いました」 いそがいさんは絵本を広めるため、地元富山県の図書館を駆け回った。その結果、県と市あわせて40館の図書館で、寄与というかたちで絵本が収蔵されることが決定。また、出版社の推薦を受け、全国図書館協議会より「学校図書館に適した図書」に選ばれ、富山県すべての小中学校と一部の高校に配本された。 さらに、いそがいさんはクラウドファンディングで資金を募り、パッチワークファミリーと公言している女優の中谷美紀さんに絵本の推薦文を依頼。約半年間にわたる交渉が実り、中谷美紀さんの推薦文が絵本のオビに掲載された。 「彼女は、パッチワークファミリー当事者であることをポジティブに発信されています。そんな方に推薦文をいただけたら絵本の説得力が増すと思いました。同じ境遇にいる人や彼女の発信によって勇気づけられている方々に、絵本が届くことを切に願っています」 こうした公の機関や影響力のある人物からの後押しを受けたことは、大きな意味を持つ。従来の家族観を更新させるタイミングが、すでにきているということだろう。近い将来、パッチワークファミリーをはじめとするさまざまな家族の存在が当たり前となり、「普通」と「普通ではない」の境目がなくなることを願っている。
上野さき