“生きる力”をどれほど信じられるか──コロナ禍で逃げ場を失った人、よりそう「声」の現場 #今つらいあなたへ
相談員が24時間、人々の悩みに耳を傾け、一緒に解決する方法を探す「よりそいホットライン」。2020年度のフリーダイヤルにかかってきた電話件数は897万件以上で、このうち「自殺防止」は73万件と多かった。実際に女性や若年層の自殺は前年度より増加している。2020年4月に最初の緊急事態宣言が発令されてから約1年半、相談にどのような変化があり、どう対応してきたのか。運営側に話を聞いた。(取材・文:堀 香織/Yahoo!ニュース オリジナル 特集編集部)
コロナで逃げ場がなくなった
「コロナ禍で新しい種類の相談が増えたわけではありません。内容は変わらず、生活支援を中心に、DVや性暴力、希死念慮などが主です。ただ、女性と20~30代の若年層の相談は、圧倒的に増えました」 そう語るのは、NPO法人「場作りネット」(長野県上田市)で副理事を務める元島生さん(もとしま・しょう、38)。「よりそいホットライン」には2011年の設立当初から関わるコーディネーターだ。
元島さんによれば、2020年に増えたという女性や若年層の相談には共通項があるという。それは「逃げ場がなくなったこと」だ。 「外出規制やリモートワークの普及などで家庭が“密室”となり、DVや性暴力が常態化する。親や友人との関係の薄い人がコロナで失職し、蓄えも頼る人もなくて、生活が困窮する。家庭や職場しか居場所のない人々にとっては、『もう死ぬしかない』と追い込まれる事態なんです」 一般社団法人社会的包摂サポートセンターが運営するよりそいホットラインは、悩みや困ったことを抱える人の相談窓口だ。2020年度、フリーダイヤルで相談員につながった相談件数は約23万8千件。単純計算で1日650件ほど。 一般的な電話相談(傾聴)と異なるのは、解決の糸口をともに探し、行動していくことだ。電話やSNSで届いた相談者の声をしっかり聞き、その困難が何に発しているのかを見極める。そのうえで、相談者の暮らす地域の民間支援団体や自治体、医療機関などと連携し、立ち直りにつながるところまで伴走する。現在、全国の約1700団体と連携し、電話相談を受ける相談員は約1200人、継続支援を行うコーディネーターは約80人いる。